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『組織マネジメントの研究Vol.21』【マネジメントの戦略③】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

15.マネジメントの戦略③

【1】グローバル化のマネジメント
●経済と国家主権の分離
グローバル企業の爆発的な増加の原因は、国境、文化、イデオロギーを超越する真のグローバル市場の出現である。国境は、もやは決定要因ではない。それは、制約要因、阻害要因、複雑化要因でしかない。今日の決定は、没国家のグローバル市場である。

過去300年来初めて、経済と政治が分離しつつある。

グローバル企業とは、国境を、自らを規定するものとしてではなく、必然性のない制約の一つにすぎないものとして見る最初の没国家的な組織、少なくとも最初の重要な現代組織である。

●グローバル企業と国家
グローバル企業に対する今日の批判は、すべてまちがいである。グローバル企業は、その受け入れ国において、国家主権に害をなす存在、すなわち、社会、経済、財政に関わるあらゆる政策を無視する存在として批判される。その母国においても批判される。政治的権威を覆さないまでもそれを回避しようとする存在、経済政策や職場を支配し、経済以外の分野さえ左右する強大な権力とされる。

これに対するグローバル企業の反論は正しい。いかに強大であっても、一国の政府に対抗する力はない。政治と経済の衝突において、いつも負けるのは経済のほうである。

だが、この議論も重要な点を見落としている。グローバル企業は、その意思決定が経済の合理性に基いており、政治的な主権の意思から絶縁しているために問題とされている。そこに解決策はない。

よき市民という言葉が、事業活動を行っている国において、その国に経済や市場を中心に考え且つ行動するということを意味するのであれば、ナンセンスというべきである。そのように考えかつ行動するということは、グローバル市場における資源の最適化というグローバル企業の論理の根底を否定することになる。

●国際的取り決め
この緊張関係を解決するには、国際的な取り決めが必要である。グローバル企業受け入れの条件、所有権の制限、利益の送金や資本の還元、人、物、金の移動の自由に対する制限について、何らかの取り決めが必要である。さらに、グローバル企業を非政治家することが必要である。

発展途上国にとって、グローバル企業以上に大事なものはない。途上国にとって、経済的、社会的発展の可能性は、グローバル企業から得られる技能の取得にかかっている。

グローバル企業は、今日もっとも重要な経済的存在である。それは、グローバル経済という新しい現実を反映した存在であるがゆえに重要である。資源の最適化のもっとも有効な機関であるがゆえに重要である。

【2】成長のマネジメント
●成長には戦略が必要
成長は自動的には 起こらない。事業の成功によって、自動的にもたらされるものではない。成長は不連続である。成長のためには、ある段階で自らを変えなければならない。成長には戦略が必要である。準備が必要である。成長にはなりたいと思うことに焦点を合わせた行動が必要である。だが、トップに変革の意志がなければ、いずれも無駄になる。

●成長そのものを目標にするな
長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。あまりに急速な成長は組織を脆弱化する。マネジメントを不可能にする。緊張、弱点、欠陥をもたらす。それらの緊張、弱点、欠陥のゆえに、ちょっとしたつまずきが致命傷となる。今日の成長企業が明日の問題児になるという宿命には、ほとんど例外がない。

☆成長そのものを目標にすることはまちがいである大きくなること自体に価値はない。『よい企業になること』が正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。

●必要な成長とは何か
しかしそれでも、成長は望ましい目標とされ続ける。いかに成長をマネジメントするかを知っておかなければならない。

マネジメントに携わるものは、以下の点を検討しておく必要がある。

第一に、必要とされる成長の最小点について検討しておく必要がある。生命を維持しているだけの地位は確保しなければならない。さもなければ限界的な存在となる。不適切な規模となる。市場が拡大しつつあるならば、組織もまたその生命力を維持するために成長していかなければならない。

企業にとって成長の目標とは、量的な目標ではなく経済的な目標でなければならない。売上高10億ドルは、正しい目標とはいえない。実際のところ、企業は業績に貢献しない活動を切り捨てることによって成長できる。

第二に、成長の最適点について検討しておく必要がある。それ以上成長しようとすると、資源の生産性が犠牲になる点はどこか。収益性を高めようとすると、リスクが急激に増大する点はどこか。成長の最高点ではなく最適点こそ成長の上限としなければならない。成長は最適点以下でなければならない。

●成長への準備
成長には準備が必要である。いつ機会が訪れるかは予測できない。準備しておかなければならない。準備ができなければ、機会は去り、他所へ行く。

成長するには、トップが自らの役割、行動、他者との関係を変える意志と能力を持つ必要がある。言うは易く行うは難い。

変化すべき人あるいは人たちとは、多くの場合功績のあった人たちである。成功を収めたまさにそのとき、その成功をもたらした行動を捨て、それまでの習慣を捨てるよう要求される。リーダーとしての地位を捨て、育てた子を渡すよう要求される。リーダーとしての地位を捨て、育てた子を人に渡すよう要求される。なぜなら成長というものは、一人ないしはひと握りの人間によるマネジメントの代わりに、チームによるトップマネジメントを要求するからである。

ごく早い時期から、成長のための準備をしておかなければならない。特に三つのことを行っておかなければならない。

基本活動を明らかにし、それらの活動に取り組むべきトップマネジメント・チームを編成する。
変化すべきときを知るために、方針と行動の変化を要求する兆候に注意する。
心底変化を望んでいるかを正直に判断する。

成長するには、変化すべきタイミングを知らなければならない。それまでのマネジメントや組織構造では不適切なほど成長したことを教えてくれる兆候を知らなければならない。

ここに確かな兆候がある。急成長を遂げてきた小企業や中企業のトップは、部下を自慢にするものである。それでいながら、どの部下も準備ができていないと感じるようになる。これこそまさに変化の必要性を示す兆候である。変化すべきときが来ると、部下に大きな責任を与えたり、重要な分野を任せることのできない理由を見つけだす。「最高の人間だが準備ができていない」という。だがこれは、まさにトップ自身に準備ができていない証拠である。

成長が必要であるとの結論に達しながら、自らの行動を変えることを欲していないことを自覚するにいたったトップには、一つの道しかない。身を引くことである。

組織とは人間の成果である。責任あるトップは、自らが変化を望まないことを自覚するとき、それまで育ててきた組織を窒息させ、いじけさせ、抑圧するであろうことを悟る。自らの成果たる組織の要求に応えられないのであれば、身を引くことが自らと組織に対する責務である。

 

要点整理

【1】グローバル化のマネジメント
●経済と国家主権の分離
グローバル企業の爆発的な増加の原因は、国境、文化、イデオロギーを超越する真のグローバル市場の出現である。過去300年来初めて、経済と政治が分離しつつある。グローバル企業とは、最初の没国家的な組織、少なくとも最初の重要な現代組織である。

●グローバル企業と国家
グローバル企業に対する今日の批判は、すべてまちがいである。グローバル企業は、その受け入れ国において、国家主権に害をなす存在として批判される。その母国においても批判される。政治的権威を覆さないまでもそれを回避しようとする存在、経済政策や職場を支配し、経済以外の分野さえ左右する強大な権力とされる。

これに対するグローバル企業の反論は正しい。いかに強大であっても、一国の政府に対抗する力はない。政治と経済の衝突において、いつも負けるのは経済のほうである。

グローバル企業は、その意思決定が経済の合理性に基いており、政治的な主権の意思から絶縁しているために問題とされている。そこに解決策はない。

事業活動を行っている国において、その国に経済や市場を中心に考え且つ行動するということは、グローバル市場における資源の最適化というグローバル企業の論理の根底を否定することになる。

●国際的取り決め
この緊張関係を解決するには、国際的な取り決めが必要である。グローバル企業受け入れの条件、所有権の制限、利益の送金や資本の還元、人、物、金の移動の自由に対する制限について、何らかの取り決めが必要である。さらに、グローバル企業を非政治家することが必要である。

発展途上国にとって、グローバル企業以上に大事なものはない。途上国にとって、経済的、社会的発展の可能性は、グローバル企業から得られる技能の取得にかかっている。

グローバル企業は、今日もっとも重要な経済的存在である。それは、グローバル経済という新しい現実を反映した存在であるがゆえに重要である。資源の最適化のもっとも有効な機関であるがゆえに重要である。

 

【2】成長のマネジメント
●成長には戦略が必要
成長のためには、ある段階で自らを変えなければならない。成長には戦略が必要である。準備が必要である。成長にはなりたいと思うことに焦点を合わせた行動が必要である。だが、トップに変革の意志がなければ、いずれも無駄になる。

●成長そのものを目標にするな
長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。あまりに急速な成長は組織を脆弱化する。マネジメントを不可能にする。

☆成長そのものを目標にすることはまちがいである大きくなること自体に価値はない。『よい企業になること』が正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。

●必要な成長とは何か
成長は望ましい目標とされ続ける。いかに成長をマネジメントするかを知っておかなければならない。

マネジメントに携わるものは、以下の点を検討しておく必要がある。

第一に、必要とされる成長の最小点について検討しておく必要がある。生命を維持しているだけの地位は確保しなければならない。さもなければ限界的な存在となる。不適切な規模となる。市場が拡大しつつあるならば、組織もまたその生命力を維持するために成長していかなければならない。

企業にとって成長の目標とは、量的な目標ではなく経済的な目標でなければならない。

第二に、成長の最適点について検討しておく必要がある。それ以上成長しようとすると、資源の生産性が犠牲になる点はどこか。収益性を高めようとすると、リスクが急激に増大する点はどこか。成長の最高点ではなく最適点こそ成長の上限としなければならない。成長は最適点以下でなければならない。

●成長への準備
成長には準備が必要である。いつ機会が訪れるかは予測できない。準備しておかなければならない。準備ができなければ、機会は去り、他所へ行く。

成長するには、トップが自らの役割、行動、他者との関係を変える意志と能力を持つ必要がある。言うは易く行うは難い。

成功を収めたまさにそのとき、その成功をもたらした行動を捨て、それまでの習慣を捨てるよう要求される。

成長というものは、一人ないしはひと握りの人間によるマネジメントの代わりに、チームによるトップマネジメントを要求するからである。

ごく早い時期から、成長のための準備をしておかなければならない。
特に三つのことを行っておかなければならない。

基本活動を明らかにし、それらの活動に取り組むべきトップマネジメント・チームを編成する。
変化すべきときを知るために、方針と行動の変化を要求する兆候に注意する。
心底変化を望んでいるかを正直に判断する。

成長するには、変化すべきタイミングを知らなければならない。変化すべきときが来ると、部下に大きな責任を与えたり、重要な分野を任せることのできない理由を見つけだす。「最高の人間だが準備ができていない」という。だがこれは、まさにトップ自身に準備ができていない証拠である。

成長が必要であるとの結論に達しながら、自らの行動を変えることを欲していないことを自覚するにいたったトップには、一つの道しかない。身を引くことである。

組織とは人間の成果である。責任あるトップは、自らが変化を望まないことを自覚するとき、それまで育ててきた組織を窒息させ、いじけさせ、抑圧するであろうことを悟る。自らの成果たる組織の要求に応えられないのであれば、身を引くことが自らと組織に対する責務である。

 

所 見

●グローバル企業の今
グローバル企業の台頭について、ドラッガーは当時、圧倒的な肯定をしている。今でも肯定するのであろうか。経済の合理性の追求ゆえ台頭したものだから肯定しているのであろうか。しかしながら、政治と経済の力は逆転していてきているように見える。それくらい巨大化してきる。政治にも力を及ぼしてきているように見える。今や多くの問題が顕在化している。租税回避問題だけでなく、政治的な偽情報拡散への関与、新興企業の買収戦略による市場の独占化、そして、何より、貧富の差が拡大した。コロナ禍においても、彼らは更に富を独占した。それらの中心は、アメリカの巨大IT企業を中心とするGAFAMだ。

新自由主義、すなわち、市場原理主義、小さな政府、規制緩和、労働保護の廃止などの流れから、グローバル企業が台頭してきたのはほぼ間違いない。何よりも、一部に富が集中し、世界的に貧富の差が拡大した。これをもって、良しとすることはできない。故意に政治が経済の手綱を緩めた結果だ。

●何をもって成長とするか
ドラッガーは、「成長そのものを目標にすることはまちがいである。大きくなること自体に価値はない。『よい企業になること』が正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。」と述べている。

それについては、私も全く同感である。何よりも、組織として社会的に特有の使命を果たし、そこで働いている人々が強みを発揮して自己実現、成長し、幸福感を得ることがとても重要なことであり、売上や規模それ自体を目標として大きくすることに価値はない。意味はないと思う。また、売上や規模ばかり大きくすることを重要視するような、経営のコンサルタントも間違いだと思う。そのようなやり方は、さまざまなところで歪みをもたらす。

人間も一人ひとり違うように、業態、業種によって、その組織の状況によって、適切な規模があり、成長の最適点というのがある。タイミングがある。そして、成長の前提としての準備、すなわち、人材育成がとても重要になる。

●成長のためにはトップに意識改革が必要
あらゆるところで散見されるのは、成長を止めているのが実はトップマネジメントであるということである。彼らは売上があがってさえいれば、また、スケールメリットを有していればそれで良しとする。上手くいっていると勘違いする。自らが新しい分野に挑戦することをためらったり、成長に手ごたえを感じれないことを自分以外の者のせいにする。『良い企業になること』を追求するためには挑戦、イノベーションは必須である。それらをしなければ、組織の意識はどんどん低下する。知らず知らずのうちに、その状態が当たり前になる。組織はトップマネジメントの写し鏡であり、トップマネジメント以上には成長できない。意識の高い人間ほど、成長できていないことを感じ苛立ちを我慢できない。最後は、意識の低い人間だけが残る。

ドラッガーが述べているとおり、『よい企業になるための成長』を拒んでいる、もっと言えば、自分と向き合うことのできない、自らをマネジメントできない、もしくはできなくなったトップマネジメントは退くべきである。全員を道連れにすべきではない。

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