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『組織マネジメントの研究Vol.23』【マネジメントの戦略⑤】マネジメントの正統性、結論

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

15.マネジメントの戦略⑤

【1】マネジメントの正統性
●二つの発展
マネジメントは、二つの発展の原因であり、結果である。それらは、①組織社会となったことであり、②知識社会となったことである。この二つの発展には相関関係がある。知識によって生計を立てられるようになったのは、組織社会になったからであり、組織が存在し機能しうるようになったのは、高度の学校教育を受けた多くの人がいるからである。ますます多くの人がマネジャーとなり、成果に責任を負う専門家となった。

マネジメントは、組織が機能し、それぞれの使命を遂行することを可能とする機関である。そして、マネジメント自体、一つの知識である。それ自体の領域、技能、知識を持つ体系である。しかもこの組織社会において、組織のマネジメントは社会のリーダー的階層を形成している。

●テクノクラシーの限界
マネジメント・ブームが何かを教えたとしたら、マネジメントの仕事を組織の内部に関わるものと規定したテクノクラシーとしてのマネジメント限界である。なぜならば、この組織社会にはマネジメント以外にリーダー的階層は存在していないからである。

マネジメントの第一の役割は、組織本来の使命を果たすべくマネジメントすることである。第二の役割は、生産的な仕事を通じて人に成果をあげさせることである。第三の役割は、社会と個人の生活の質を提供することである。この第二、第三の役割は、テクノクラシーをはるかに超える課題である。

ここで強調すべきは、よいことを行うための基礎は、よく行うことであるということである。よき意図は無能の言いわけにはならない。いわゆる社会意識が、自らの企業、病院、大学に本来の成果をあげさせるべくマネジメントすることの代わりになるとする考えは、愚かさか狡さか、あるいはその両方を示すにすぎない。

【2】結論
われわれはすでに、社会のニーズを事実上の機会に転換すること企業の役割であることを知っている。市場と個人のニーズ、すなわち消費者と従業員のニーズについて、予期し、識別し、満足させることは、マネジメントの役割である。しかし、これらの役割でさえ、正統性の根拠としては不十分である。

自立的なマネジメント、すなわち自らの組織に奉仕することによって、社会と地域に奉仕するというマネジメントの権限認知されるには、組織なるものの本質に基盤を置く正統性が必要とされる。そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生産的なものにすることである。これが組織の目的である。マネジメントの基盤となる正統性である。組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。

社会的な目的を達成するための手段としての組織の発明は、人類にとって一万年前の労働の分化に匹敵する重要さを持つ。組織の基礎となる原理は、「私的な悪徳は社会のためになる」ではない。「個人の強みは社会のためになる」である。これがマネジメントの正統性の根拠である。そして、マネジメントの権限の基盤となりうる理念的原理である。

要点整理

【1】マネジメントの正統性

●テクノクラシーの限界
マネジメントの役割)
・第一の役割
組織本来の使命を果たすべくマネジメントすることである。
・第二の役割
生産的な仕事を通じて人に成果をあげさせることである。
・第三の役割
社会と個人の生活の質を提供することである。

この第二、第三の役割は、テクノクラシーをはるかに超える課題である。

ここで強調すべきは、よいことを行うための基礎は、よく行うことであるということである。

【2】結論
自立的なマネジメント、すなわち自らの組織に奉仕することによって、社会と地域に奉仕するというマネジメントの権限認知されるには、組織なるものの本質に基盤を置く正統性が必要とされる。そのような正統性の根拠は一つしかない。すなわち、人の強みを生産的なものにすることである。これが組織の目的である。マネジメントの基盤となる正統性である。組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。

組織の基礎となる原理は、「個人の強みは社会のためになる」である。これがマネジメントの正統性の根拠である。そして、マネジメントの権限の基盤となりうる理念的原理である。

 

所 見

【1】マネジメントの正統性、【2】結論
あらためて、組織の正統性、マネジメントの正統性をまとめてみたいと思います。

①組織が社会にとっての存在価値となる特有の使命を果たすこと。
②個人の強みを生産的なものとし、組織に貢献させ、自己実現させること。
③それらを通して、社会と個人の生活の質をあげること。

一言で言うと、「組織の特有の使命を果たし社会生活の質的向上を実現するために、個人の強みを社会のためになるようにマネジメントすること」が、組織とマネジメントが正統であることの根拠になるということだと思います。

上記のドラッガーの言葉をものさしにして、昨今の日本の組織を分析するとどうでしょうか。コロナ禍で自己対話が進み、価値観が変わり、確実に集団ではなく、個の時代となりました。枠にはめられた価値観ではなく、多様性を認める価値観へと転換が起きています。しかしながらその変化は大勢を占める状況ではなく、少しづつ始まったばかりでしょう。まだまだ、日本の組織全体として、個性を引き出し生産的な力にして社会に役立てるようなマネジメント、一人ひとりが自己実現しうるマネジメントができているとは言い難い状況だと思います。そのためには、マネジメントが最も重要な組織資源であると位置づけられることが常識になることが重要だと思います。人、物、金、時間、情報、そして、マネジメントと。

ドラッガーが述べている結論部分は、普遍的価値のある言葉だと思います。組織のマネジメントだけでなく、自己のマネジメントにもあてはまると思います。

自己のマネジメントにおいては置き換えてみると、次のように言い換えることができると思います。

「今世での使命を果たし世の中に貢献すること、そのために自分の中にある素晴らしいもの、すなわち、自分にしかない強みを生産的なものとして社会に役立てること。また、そのことを通じて自己実現すること。」

ということになると思います。

個の時代では、強みや得意なことだけでなく、更にバージョンアップして自分が本当にやりたいことも加わってくると思います。そうすると世界全体が、より幸福度の高い世界になることでしょう。

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