心の本業の探求
~自分らしい生き方を求めて~

マネジメント【基本と原則】/P.F.ドラッガー

P.F.ドラッガー/マネジメント【エッセンシャル版】 基本と原則 書評

概要&解説

  • F. ドラッガー(1909年-2005年)について

オーストリア生まれ。「マネジメントの発明者」『マネジメントの父』、『20世紀の知の巨人』と称されます。自らを『社会生態学者』と呼び、人間の社会を観察して、そこで起こっていることを伝えることが自分の役割だと考えたいたようです。専門領域は、政治、行政、経済、経営、歴史、哲学、心理、文学、美術、教育、自己実現など多岐に渡ります。

本人によれば、彼の最も基本的な関心は「人を幸福にすること」にありました。そのためには個人としての人間と、社会(組織)の中の人間のどちらかのアプローチをする必要がありますが、ドラッカー自身が選択したのは後者でした。

成功するためには、「自己の長所(強み)」「自分がいつ変化すべきか」を知

ること、そして、「自分が成長できない環境から迅速に抜け出すこと」を勧めていました。新しい挑戦こそが、プロフェッショナルの成功に貢献すると主張していました。

  • 書籍について

この書籍は、マネジメントのバイブル中のバイブルと言ってよいと思います。

ドラッカーが自らのマネジメント論を体系化した大著『マネジメント――課題、責任、実践』のエッセンスを一冊にまとめた本です。エッセンス版ではありますが、必要十分な内容となっています。難解な書ですが、じっくり時間をかけ掘り下げて読むことをお勧めします。

書籍の中で、『基本と原則に反するものは、例外なく破綻する』というドラッガーの有名な言葉が述べられていますが、営利企業に関わらず、あらゆる組織に共通の基本と原則が述べられています。

経営者、組織のリーダー、管理職、一般職員、一般の方々など全ての人々に何らかの示唆を与えてくれる書物です。マネジメントに携わっている方々にとっては、必読書と言っても良いですが、一般職員の方々においても、現在所属している組織が、正しく機能しているかについて、着眼点を与えてくれます。また、彼の哲学の根底に流れているものは、『人を幸福にすること』です。その普遍性が故に人間として何らかの達成、成功のための道標が書かれています。

『自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである。』と述べている通り、組織ではなく、自分自身のマネジメント、すなわち、セルフマネジメントについても述べています。

 

書評

ドラッガーの『マネジメント』はあまりに有名すぎる本で、様々な人が解説したり、論評したりしています。最近流行りのYouTubeでの書籍解説(5~10分程度)でもたくさん出てきます。基本的にどれも内容が間違っているわけではないのですが、以下の大切な視点が抜けている気がしています。

それは、私自身が大切にしたい視点であり、ドラッガー自身も大切にしている視点です。それは、「(社会的関わりとしての)人間の幸福とはどのように得られるのか」です。

前述したことについて、ドラッガーは以下のように述べています。
マネジメントの社会的正当性の根拠は一つしかない。人の強みを生産的なものにすることである。組織とは、何らかの貢献を行わせ、個として、また、社会を構成する一人ひとりの人間に対して、自己実現させるための手段である。人のエネルギーを解き放ち、それを動員することが組織の目的であり、成果こそ組織の目標である。個人の強みは社会のためになる。マネジメントの権限の基盤となりうる理念的原理である。」

要するに、組織を構成する一人ひとりの強み、個性を引き出し、社会的なものとすべく、生産的力に結集していくこと。それが組織の目的であり、マネジメントの理念的原理、すなわち、根源と言っているのだと思います。また、そういう組織をつくならければ、いずれ破綻するのだと言っているのだと思います。その視点でマネジメントすることがなぜ、重要なのでしょうか。そこには人間としての尊重があり、自己実現があり、幸せに通じる力学、ベクトルがあるからだと思います。それと逆のことをするならば、本人にとっても、組織にとっても良い結果とはならないのは考えれば分かることです。

私自身、まだまだ未熟ですが、約20年間マネジメントと真正面から向き合ってきました。マネジメントとは、人間としてのあらゆる能力が求められ、また、それらをまさにオーケストラの指揮者のように、上手にハーモニーさせ、最高のものをつくりあげる力が必要になると感じています。マネジメントにはこれでゴールという限界はなく、研鑽、探求し続けることが重要となります。普遍的世界の探求が必要となります。人間の心の領域を理解することが求められます。特に人間の心理を理解することは必要です。なぜならば、自分自身と向き合い続けることを含めて、人間そのものを理解することなしに、マネジメントはできないからです。強みを引き出し生産的なものにしていくといっても簡単なことではありません。個々の人間の背景を理解すること無しにはできません。自分自身を実験台としながら、幸福の最大化という視点で心理学的探求を約6年以上続け、また、この間、一人ひとりとのディープ・ダイアログ(深い対話)を重要視してきたのもそのためです。

マネジメントは、ドラッガーが心理、哲学、文学、教育、自己実現など人間のソフト面の研究にも力を入れたように、『人間学的アプローチ』も必要になります。

ただ、これら必要なことは、ドラッガーが「マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくても学ぶことができる。」と述べているように、

『真摯さ』があれば、失敗、挫折のプロセスを踏んだとしも、いずれは辿りつくことです。私の考えですが、ここでいう『真摯さ』とはエゴイズムを超え、『物事の本質、普遍性を大切にし、自分自身を含めて一人ひとりが幸せとなり、成功を掴むことを信条として努力すること』だと思います。

最後に
今回の書評については、論点をかなり絞って述べさせていただきました。本書籍は当研究所においても、極めて重要な論点を与えてくれるものです。今後、各章ごと、もしくは論点ごとにじっくり深め、論評を出させていただきたいと考えています。

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