心の本業の探求
~自分らしい生き方を求めて~

『人間力とは何か?』~人生を導くためにも、組織づくりにおいても問われること~

人間力という言葉が当たり前に使われるようになりました。マネジメントという言葉と同様、感覚的に使われてはいますが、説明できる人は少ないように思います。

10年ほど前に生活困窮者のフォーラムにおいて登壇する機会をいただき、原稿を作成した際、それまでの取組み過程から『人間力』という言葉が直観で浮かび原稿に入れ込みました。長年高校の教師をしていた母が事前に原稿に目を通した時、「人間力という言葉は造語で一般的ではないんじゃないの?」と言われたのを覚えています。私が産み出した言葉というわけではないのですが、時代の流れとして必然的に顕在化していった言葉だったのだと思います。

ウィキペディアでは、人間力は、「社会を構成し運営するとともに、自律した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」と書かれていますが、わかるようでわからない説明です。

人間力は、一人の人間として自己開発し、自己実現して幸せになるためにも、人材開発をして組織力をあげるための視点としても、とても重要なものだと思います。

そこで、あくまで、持論なのですが、人間力について考察し、整理してみたいと思います。

1.人間力とは(総論)
端的に言うと、「人間を幸せに導くための総合力」だと思います。全て人は、幸せになるために生れてきました。人間は認識能力の拡大に比例して、幸せになることが分かっています。認識能力の拡大の延長線上には、自己実現、使命・天命があるのだと思います。

2.3つの人間力(各論)
人間力には、構成要素が3つあります。一つ目は、縦軸(人間性/右脳)、二つ目は、横軸(知識・教養/左脳)、三つ目は、輪(人とのつながり)です。一つひとつ見ていきましょう。

①縦軸
縦軸とは、人間性、右脳のことです。心、魂の状態を表し、その成長の次元が大切になります。心、魂の成長には、人として大切な部分、すなわち、愛情、倫理観、幸福感が包含されます。

道徳観や倫理観のみを指すのではありません。縦軸を道徳観や倫理観とみなし絶対視して人に強要したり、あるいは、著名な人物の考えを神の如く敬うように強要したり、そこからはみ出た考え方や行動を著しく戒めるような取組みによって、人間性の成長を促そうとするグループも散見しますが、それでは、人の心、魂は成長しません。むしろ以前よりも、悪い方向に強化されてしまうばかりです。心・魂を痛めてしまうだけです。仮にそのように行動ができるようになったとしても、思考によって自らに強制しているだけで、本質的な成長には結びつきません。

心・魂を磨くためには、挑戦し、人生体験・感動体験をしっかり積み重ねていくことが大切になります。

具体的にどのように心・魂を磨き、成長させていくのでしょうか?それは、以下のようになると思います。①自分の人生にとっての使命・課題・テーマを見出すこと、②挑戦・体験すること、③内観すること、④気づき、悟りを得ること、⑤行動変容を起こすこと。①~⑤を積み重ねていくことが心・魂を磨く上で、大事になるのだと思います。

②横軸
横軸とは、知識・教養、論理的思考能力、左脳のことです。あくまで横軸は、縦軸の補完的能力になります。縦軸を深めるためにも、縦軸をより活かしていくためにも横軸が必要になってきます。縦軸だけでは、縦軸を深めることができません。例えば、縦軸に通じる人間の心理を深めようとすれば、横軸の心理学を学ぶ必要が出てきます。また、マナジメントは縦軸がとても大切になりますが、だからといって、横軸の知識としてマネジメントを学んでいなければ、失敗しなくて良いことを失敗し続けたり、技術的な裏付けが無いので、確信をもって行動したり、伝えたりすることも難しくなります。横軸は、他に問題解決能力を高める道具にもなります。経験知、体験知性も横軸に含まれます。

人類は、横軸の科学万能主義に陥り、縦軸の人間性を顧みない社会政策をしてきたことで、自分たちの首を絞め、危機に瀕してきています。温室効果ガス、大気汚染、原発、核兵器、プラスチックの海洋汚染など、地球環境問題として表面化しています。縦軸の補完的なものとして、横軸があるという考えであれば、そのような結果に陥ることは無かったはずです。2045年にシンギュラリティが起き、AIが人類の知能を超える技術的特異点が生じると言われていますが、余計に縦軸の人間性が大切になってくることは間違いないでしょう。また、そのような時代では、知識や論理はAIに取って代わられるので体験的な知性がより重要になってくるかもしれません。

③輪
輪とは人との繋がりのことです。人は一人では生きていけません。人との繋がりは、人間成長、幸福、愛の学びの源です。幸福や愛も人との関わりによってしか学ぶことはできません。

自己開示し対話ができる人がいるということは本当に貴重です。自己認識を高め、観点を深め、成長させてくれるかけがえのない存在です。メンターの存在も大切です。自分のことを理解し、教え、導いてくれる人は、自分の人間としての成長を助けてくれる大切な存在になります。人によっては、大きな転機を与えてくれる存在にもなります。他にも、いざという時、助けてくれる友人がいたり、頼れるカウンセラーがいたり。社会との繋がりのある人は幸福度が高いこともわかっています。

以上となりますが、自己開発して自己実現するためにも、また、人材開発をして一人ひとりが輝き、自分たちも社会も幸せする組織づくりをするためにも、人間力の視点を意識して取り組んでいくと良いのではないでしょうか。

よろしければ参考まで。

 

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