心に響くあり方を探求する

直感を磨く~深く考える七つの技法~/田坂広志

概要&解説

①田坂広志(たさか ひろし)氏について

1951年生まれ。74年東京大学卒業。81年同大学院修了。工学博士。起業家であり、社会起業家論を専攻する経営学者でもある。三菱金属に入社し原子力事業に携わった。日本総合研究所に転じ、技術研究部や事業企画部の部長を経て、取締役の一人として名を連ねた。多摩大学の経営情報学部や大学院の経営情報学研究科で教鞭を執った。08年世界経済フォーラム(ダボス会議)のメンバーに。東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を機に、内閣官房参与に就任した。後進の育成に努めており、私塾である田坂塾を開塾。現在、全国から5800名を超える経営者やリーダーが集まっている。多摩大学名誉教授。グロービス経営大学院大学経営研究科特任教授。著書は90冊余。

②書籍について

私にとっては、とてもインパクトのある書籍だったし、今まで人生で学んできた学問的、体験的な知識の全てが整理された気がした。人間の感受性、論理的思考を超えた悟性的世界である直観はいったい、どこからやってくるのか、そして、どのようにしてその叡知を得るのかが書かれている。天才は頭脳の高さ、IQの高さ故に天才なのではなく、ある特別な世界とつながることができることが天才を天才たらしめていることが論証されている。スピリチュアルな世界、心理の世界、科学の世界、論理の世界などいずれかに偏っているものが多いが、全てが統合されている。霊的でありながらも科学的であり、論理的な世界観が広がっている。

 

書 評

①限界を突破できる人材

田坂氏は本書の中で、「世界最先端研究所で求められる人材とは、『垂直知性』ではなく、『水平知性』で考える人材である。『スペシャリスト』ではなく、『スーパージェネラリスト(総合的な知識で問題解決に取り組める人材)』である。」と言っている。その理由は、一つのものを専門的に深く掘り下げても、限界を突破することは難しく、むしろ、水平的知性、すなわち、他の様々な分野の知識を身に着けないと、より深い次元まで深めることはできないからという趣旨のことを述べている。

全く同感である。広い知識、教養、すなわち、多くの引き出しを自分の中にもつことは、創造性を豊かにするだけでなく、問題解決能力を高める力に通じる。今までと違う次元で物事を考えられるようになるには、水平知識は不可欠だと思う。どこまで広げるのか?という問題もある。個人的には、仕事の内容に関わらず、また、知識のレベル云々に関わらず、宇宙物理学的視点、心理学的視点、魂力学的視点は人生から手放せない必要不可欠な視点だと思う。

②直観はどこからくるのか

田崎氏は、本書の中で、「天才は、宇宙の『ゼロ・ポイント・フィールド』と繋がることができる。現代科学の最先端である、量子物理学の世界で論じられている仮説、『ゼロ・ポイントフィールド・仮説』、すなわち、宇宙の全ての情報が『波動エネルギー』として記録されている世界があり、そこと繋がることができる。」としている。そこから情報を得ることが、直観を得るということになる。そして、天才の多くは、自分の発想やアイディアを『自分が生み出した』のではく、『どこかから降りてきた』と思っているとのことだ。

発想が泉のようにいくらでも湧き出てくる時、もしかしたら、宇宙の叡知から情報を得ているのかもしれない。その状態は、例えて言えば、ヨガでいうところの第七チャクラが発動している時かもしれない。

③直観の前提となるもの

田崎氏は本書の中で、直観を阻害するものがある。それは、『エゴ』『自己限定』であるとしている。『エゴ』を静めること。そして、『自己限定』すなわち、「自分の能力はこの程度しかない」と精神を委縮させないことが必要だとしている。自分の可能性を信じることが必要だとしている。

仏の世界でも『禅定』というものがある。簡単に言うと「心を整えること」だ。そのような状態をつくれないと、正しく物事を見定める観(智慧、善知識)が働かないとしている。また、自己限定しないということでいえば、ネガティブな心の状態、自分を卑下するような状態では、可能性を閉じてしまう。最近、『引き寄せの法則』の類の書籍や映像がはびこっている。本当は仏の『因果の法則』にも通じるものだと思う。ポジティブな心の状態をつくることで、自分の夢が叶う。逆に言えば、ネガティブな心の状態は、夢を遠ざけ、ネガティブに思っている事が起ってしまうとしている。そういう趣旨の内容のものを多く目にする。もちろん、自分も一通りは読んだり、見たりはした。しかしながら、決定的なことが抜け落ちている気がする。ほとんどの人が自分が思った通り夢が叶わないのは、ネガティブな状態を無理やりポジティブにもっていこうとしているからだと思う。ネガティブとなっている自分の本当の感情に嘘の上塗りをして無理やりポジティブな状態をつくっているので、うまくいくはずはないということだ。本当の感情をしっかり認め、そのうえでその背後にあるものを突き止め、ネガティブになっている大元の価値観をポジティブなものへ変換していく必要がある。ネガティブがいけないのではない。ネガティブな感情を自分にあった適切な概念、言葉で糊付けをすること。顕在化することによって、見える化することによって、浄化する作業が実は最も重要なプロセスだと思う。そのプロセスを経なければポジティブへの変換は難しいと思う。

④直観をはたらかせ、宇宙とつながるための『もう一人の自分』はどのようにした
ら現れるか

田坂氏は直感で宇宙とつながるためには、『もう一人の自分』の出現が必要となるとしている。それには、七つの技法があると言っている。それらは以下の通りである。

1)呼吸を整えること、2)音楽の力を借りること、3)群衆の中に身を置くこと、4)自然の浄化力を借りること、5)散策すること、6)瞑想、7)全託の祈り

要するに、それらの技法は『心を整える』ために必要ということだ。もちろん、音楽はそれぞれ違うし、群衆の中とは、カフェなど自分が心地よい状態をつくれる場所ということだ。

『もう一人の自分』とは、私的な解釈となるが、『自己の魂』ということになると思う。普段は、エゴや感情などが邪魔をするので、意識の中に現れてくることはほどんとない。心が整った時に現れる。そして、その状態がつくれないと、直観も働かず、必要な叡知を宇宙から得ることは難しいのだと思う。

④最後に

本書は、自己の人生を自覚的に導き、未来の可能性を開く方法が書かれた良書だと思う。心を整え、もう一人の自分の存在を認め、可能性を追求し、宇宙からの叡知をいただくことで人生が開かれる。科学者である彼が言うことで説得力がある。それは、一人ひとりの人生だけでなく、経営にも通じているようだ。今回の書評では触れられなかったが、自己対話の手法についても書かれている。本書に触れることで、みなさんが覚醒し、より幸せになるきっかけづくりになればと思う。

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