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『組織マネジメントの研究Vol.5』【仕事と人間①】

 

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

8.仕事と人間①

【1】仕事と労働
●仕事と労働
仕事と労働とは根本的に違う。仕事の生産性をあげるうえで必要とされるものと、人が生き生きと働くうえで必要とされるものは違う。したがって、『仕事の論理』『労働の力学』の双方に従ってマネジメントしなければならない。働く者が満足しても、仕事が生産的に行われていなければ失敗である。逆に仕事が生産的に行われていても、人が生き生きと働けなければ失敗である。

●仕事とは何か
仕事とは一般的かつ客観的な存在である。そこには論理がある。それは、分析総合管理の対象となる。仕事を理解するうえで必要とされることは、以下の3つである。

①仕事の分析
基本的な作業を明らかにし、論理的な順序にならべること。
②プロセスへの総合
個々の作業を一人ひとりの仕事に、そして一人ひとりの仕事を生産プロセスに組み立てなければならない。
③管理のための手段を組み込むこと
仕事とは一連のプロセスである。フィードバックの仕組が必要である。

●労働における五つの次元
労働は人の活動であり、人の本性であり、論理ではない五つの次元がある。

①生理的な次元
仕事は均一に設計しなければならないが、労働には多様性を持たせなければならない。スピード、リズム、持続時間を変える余地を残しておかなければならない。仕事の手順も頻繁に変えなければならない。

人は機械ではない。一つの動作しかさせられないと著しく疲労する。生理的な疲労がある。乳酸がたまり、視力が落ちる。反応が遅くムラになる。単一の作業よりも、いくつかの作業を組み合わせた方がよく働ける。人は同じスピードとリズムで働くことに適さない。スピードとリズムを変えるとよく働ける。

②心理的な次元
労働は人格の延長である。自己実現である。自らを定義し、自らの価値を測り、自らの人間性を知るための手段である。

③社会的な次元
組織社会では、働くことが人と社会をつなぐ主たる絆となる。社会における位置づけまで決める。「人は社会との絆のために働くことを必要とする」(byアリストテレス)

④経済的な次元
労働は生計の資である。存在の経済的基盤である。

⑤政治的な次元
集団内、特に組織内で働くことには、権力関係が伴う
組織では、誰かが職務を設計し、組み立て、割り当てる。労働は、順序に従って遂行される。組織のなかで、人は昇進したりしなかったりする。こうして誰かが権力を行使する。

☆「手だけを雇うことはできない。人がついてくる。」(byエルトン・メイヨー)

【2】仕事の生産性
●生産性向上の条件
自己実現の第一歩は、仕事を生産的なものにすることである。仕事が要求するものを理解し、仕事を人の働きに即したものにしなければならない。仕事を生産的なものにするためには、四つのものが必要である。

①分析
仕事に必要な作業と手順と条件をしなけければならない。
②総合
作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
③管理
プロセスの中に、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
④道具

●成果を中心に考える
基本的なこととして、成果すなわち仕事からのアウトプットを中心に考えなければならない。技能や知識など仕事へのインプットからスタートしてはならない。それらは道具にすぎない。いかなる道具を、いつ何のために使うかは、アウトプットによって規定される。作業の組み立て、管理手段の設計、道具の仕様など必要な作業を決めるのは成果である。

 

所 見

仕事と労働、仕事の生産性

(1)要約
あらためて、簡潔にまとめると、以下のようになると思う。つまり、仕事と労働は違い、仕事は論理的なもので、労働は人間的なもの。生産性を上げるには、仕事を四つ(①分析、総合、管理、道具)に分解し、成果から逆算して、作業の流れを考えることが必要。また、そのようにして生産性を上げることは、人間軸である労働における自己実現の第一歩となる。

(2)仕事と労働のどちらが優先?
仕事と労働の関係において、難しい問題があると思う。それは、仕事に労働を合わせるのか、労働に仕事に合わせるのかという問題である。

まず、原則としては、誰もができるように、仕事を分解、分析し、作業の流れを決めること。そして、その上で、それぞれの職員の強みに合わせた仕事を考慮していくことが必要なのではないかと思う。必ずしも、それぞれの強みに合う仕事があるわけでない。しかしながら、誰でもできる作業の流れが構築されていれば、大きな障害とはならない。

仕事と労働のマッチングの状況は、組織の規模で変わってくる部分もあると思う。大きな会社、組織であれば、職員の強みに合った仕事を選択できる可能性は数多く存在すると思うが、小さな会社、組織であれば、そうはいかない。入口、すなわち、採用面接の重要性が小さな会社、組織ほど高まると思う。

(3)採用面接時における仕事と労働のマッチング
若年層になればなるほど、自己の強みをはっきりと認識している人間は少ないので、採用する側、すなわち、会社や組織の人事における役割がとても重要になるのではないかと思う。特に、本人がやりたいと思っている願望と実際の強み、個性や能力が違う場合が多々ある。そのあたりの見極めが大事で、入ってからの最初の三ヶ月間、じっくり対話を重ねながら進めていくことが大切になってくると思う。

(4)仕事とのマッチングに必要な強み(個性)を育む環境とは
自他ともに認める強みを早い段階から見出し、社会で働くことのできる人間はむしろ少ないように思う。自分自身で様々なことにチャレンジしたり、社会に出て必要に迫られて仕事をこなしていき、自己分析していく中で見えてくることの方が多いのではないか。今の社会では仕方ないところもある。

日本の現状においては、オンリーワン先進国の北欧のように、国家戦略として、「強みや個性を発揮できる社会人を育むことが国力につながる」という哲学の前提としての教育という視点がない。ビジョンが見えない。『国家』と『企業』と『教育現場』の一貫性がない。それぞれが分断している気がする。まだまだ没個性が優等生である。教育改革をしているというが、国家として、どのような人財を育んでいく必要があるのかというものが見えてこない。根本的な問題として、「人間としての幸福とは何か、豊かさとは何か」という哲学がないからだと思う。

したがって、会社、組織の生き残りのためにも、あらためて強みや個性を引き出す人材育成の視点を持つことが必要にならざるを得ない。本人と対話を重ねながら強みを育む環境をつくり、その成長ステージに応じた強みを考慮に入れた仕事にマッチングしていくことが大切になってくる。それは、本人の自己実現のためでもあり、会社、組織の成長のためでもある。

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