人間味あふれる人材開発

『組織マネジメントの研究Vol.6』【仕事と人間②】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

8.仕事と人間②

【1】人と労働のマネジメント
●X理論とY理論
ダグラス・マグレガーは、人と労働について二つの理論を示した。
・X理論
➾人は怠惰で仕事を嫌うとする。人は未熟な存在。
・Y理論
➾人は欲求を持ち、仕事を通じて自己実現と責任を欲するとする。人は成人たることを欲する存在。

マグレガーはいずれが正しいとは言っていない。しかしながらマグレガーがY理論を信じていると考えない読者はいないのではないか。しかしながら、世界は(Y理論のように)大人だけから成っているのではない。マズローも、永遠に成熟しない人間があまりに多いと言っている。

●アメトムチ
X理論によるマネジメントは有効ではない。また、報酬というアメと恐怖というムチに代わるべきもの、新しい現実に合ったアメとムチは手にできるか。

●心理的支配
産業心理学は、そのほとんどがY理論への忠誠を称する。自己実現、創造性、人格をいう。だが、その中身は心理操作である。その前提たるや、X理論のものである。心理学によって人を支配し操作することは、知識の自殺である。嫌悪すべき支配形態である。心理学の言うところによれば、「マネジメントは万能の天才を必要とする。マネジメントはあらゆる人を熟知しなければならない。あらゆる心理学的手法に通じていなければならない。部下全員に共感を寄せなければならない。あらゆる人の性格的構造、心理的欲求、心理的問題を理解しなければならない。言い換えると、マネジメントは全知全能でなければならない。」
仕事のうえの人間関係は、尊敬に基礎を置かなければならない。これに対し心理的支配は、根本において人をばかにしている。

●有効な方法は何か
では、何が有効な方法か。一般に、働くことと働く者の歴史は、とりたてて幸福なものではなかった。しかし、働くこと成果と自己実現を意味した時期や組織があった。

●日本企業での成功
日本での成功事例は、1920年代から30年代にかけ大組織向けに開発されたものである。
仕事の内容を明らかにした段階で職場に任せる
②トップマネジメントも含めたあらゆる人間が退職まで研鑽を日常の課題とする
終身雇用を持つ。
福利厚生が重視される。
⑤終身雇用、年功序列による昇進であるが、若手の面倒を見て育てることがマネジメントの第一の責任とされる。
⑥組織のあらゆる階層において、意思決定の意味を考え、責任分担することが期待される。組織全体のために責任を果たすことが期待される。日本の基本的な信条と価値観を反映している。

●ツァイス方式の秘密
ツァイス方式は、19世紀ドイツにおけるカール・ツァイスのイエナ工場で生まれた。それは、パートナーのエルンスト・アッペによってもたらされた。その最大の偉業は、働くことと働く人のマネジメントにあった。それは仕事の分析の科学的管理法だった。必要なプロセスを分析し、統合した。働くことを組織しなかった。職務を編成する責任を実際に仕事をする人達に負わせた。理論と技能を説明し、彼ら自身で職務を編成することを求めたツァイスが長年の間世界的な独占を享受した裏には、この働く者たち自身が設計し、あるいは改良した機械と工具があった。アッペは継続訓練を導入した。親方のもとで教育と学校での訓練を組み合わせた徒弟訓練に加えて、体系的な訓練講座を開き、在職中ずっと参加させた。研究集会も開かせた。働く者自身が、自らの仕事を管理しなければならないと繰り返し言っていた。雇用の保証は無かったが、業績をあげることを学び意欲のあることを示しさえすれば、景気変動に関わりなく雇用を保証していた。アッペは遺言で、経営権と所有権をツァイスに働く者全員を受益者とする財団に譲った。労働者管理ではなかった。働く者の福利厚生のために資金を出した。

●IBMの試行錯誤
IBMは当初、大変非効率な現場だった。そのため、創立者トマス・J・ワトソン・シニアは、職務の改善、拡大に体系的に取り組むことになった。個々の作業を可能なかぎり単純に設計し、誰でもそれらの作業をこなせるよう訓練した。それらのうちの少なくとも一つは、熟練技能や判断力を必要とするものにした。複数の作業を行わせることによって、仕事のリズムに変化を持たせた。生産性は大幅に向上した。働く者の姿勢にも大きな変化が表れた。働くものが職務に誇りを持つようになったことが最大の収穫だった。監督の職務も変えた。監督の代わりにボスではない、道具を使えるようにする現場アシスタントを置いた。

マネジエメントの成功物語は重要なことを示している。家族的マネジメント、参加型マネジメントなどの自称万能薬を含め、これまでの理論のほとんどは、「権限」の組織化に焦点を合わせてきた。これに対して、これらの企業は、働くことのマネジメントの基礎として、「責任」の組織化を行った。

 

要点整理

◆心理的支配による『人と労働のマネジメント』
X理論を前提にしたY理論、心理操作は人を馬鹿にした誤った考え方である。Y理論であっても(人と労働のマネジメントを)有効にするものではない。また、心理的支配は、支配する側に全知全能のを要求するので、有効にならない。仕事のうえの人間関係は、尊敬基礎にすべきである。

◆有効に機能した『人と労働のマネジメント』の事例から見えてくること
働くこと成果自己実現を意味した事例ということに置き換えることができる。
そこから見えてくる共通要素とは、

仕事の分析を明確にした上で、仕事を働くもの、職場に任せること。
研鑽、研修の場を恒常的なものとすること。教育訓練の場やサポートがあること。
働くことの基礎として、権限の組織化ではなく、責任の組織化に焦点をあてること。
である。

 

所 見


◆心理的支配による『人と労働のマネジメント』について考えること
個人的には、X理論に基づいた心理学をマネジメントの道具として使うのは間違っていると思っています。また、性善説のように、Y理論でマネジメントするのも違います。善悪ではなく、人間を『あるがまま』で捉える視点が大事です。心理学そのものがいけないということではありません。自分自身も含めて人間の内面を理解する努力なしに、マネジメントは成り立たないと思います。一人ひとりの人間の尊重に立った上で人間理解のための心理学的アプローチは必要なことではないでしょうか。

◆有効に機能した『人と労働のマネジメント』の事例について考えること
三つの事例を深堀りしてみました。そうすると以下のようなことが見えてきます。自分たちで仕事を組み立てるという醍醐味を体験すること、自らを管理、マネジメントすること。研鑽の文化や教育訓練の場、サポート体制があり、自らを高めることができる人材育成の環境があること。責任が任されていること。それらから生じてくるものは、一言で言えば、自己成長できる環境があり、それが結果にも結びついているということだと思います。人間は誰もが幸せになりたいと願っています。幸福の中核をなすのが、自己成長できているという感覚であり、自己実現につながるものだと思います。それが、成果にも結びつくということだと思います。

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