心の本業の探求
~自分らしい生き方を求めて~

『組織マネジメントの研究Vol.7』【仕事と人間③】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

8.仕事と人間③

【1】責任と保証
●仕事に焦点を合わせる
およそ人が責任という重荷を負うためには何が必要か。いかなる手立て、誘因、保証が必要か。責任に応じてもらうために、企業やマネジメントは何をしなければならないか。焦点は仕事に合わせなければならない。仕事がまず第一である。仕事そのものにやりがいがなければ、どうしようもない。

●三つの条件
働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには以下が不可欠である。

①生産的な仕事
仕事の分析、プロセスの総合、管理手段と基準、道具や情報を設計せず、仕事に責任を持たせようとしても無駄である。独創性といえども、基礎的な道具があって初めて力を発揮する。
②フィードバック情報
成果についてのフィードバック情報を与えることである。自己管理が可能でなければならない。自らの成果についての情報が不可欠である。
③継続学習
肉体労働と同様、事務労働にも必要である。知識労働が成果をあげるためには、専門化しなければならない。特に知識労働に携わる作業者集団は、学習集団とならければならない。

これら三つの条件は、働く者が自らの仕事、集団、成果について責任を持つための、いわば基盤である。マネジメントが一方的に取り組むべき課題ではない。実際に仕事をする者が初めから参画しなければならない。仕事、プロセス、道具、情報についての検討に始めから参加しなければならない。彼らの知識、経験、欲求が、仕事のあらゆる段階において貴重な資源とならなければならない。仕事、職務、道具、プロセス、技能の向上は、彼らの責任である。これは厳しい要求である。しかし満たすことのできる要求である。IBMのように自らや作業者集団の職務設計に責任を持たせることが成功するのは、彼らが唯一の専門家である分野において、彼らの知識と経験が生かされるからある。

●職場コミュニティにおける責任
働く者に仕事の成果をあげさせるには、職場コミュニティに実質的な責任を与える必要がある。従業員食堂、休暇の調整、レクリエーション活動などの問題である。これらの活動は、職場コミュニティとそのメンバーにとっては、重要な生活上の問題である。その運営が上からのものであるかぎり、いかにうまく行っても士気は向上しない。これらの活動に関わる責任は、マネジメントではなく、職場コミュニティに任せるべきである。これらの活動は、リーダーシップを発揮し、責任を持ち、認められ、学んでいく機会である。重要なことは、職場コミュニティの問題は自治でなければならないということである。意思決定の責任は、その意思決定の影響に直接関わるところに与えなければならない。

●誰もがマネジメントである
誰もまだ、働く者に対して、「仲間のマネージャー諸君」とは呼びかけていない。しかし、それこそが目標である。今後も、マネジメントの権限と権力、意思決定と命令、所得の格差、上司と部下という現実は残るしこれらのものは存在し続ける。しかし、われわれは、誰もが自らをマネジメントの一員と見なす組織をつくりあげるという課題がある。

●身分の保証
イノベーションや変化への抵抗は、人間の本性ではない。仕事と収入の保証が与えられているところでは抵抗は見られない。責任を持たせるために必要な保障とは、約束ではなく実行である。給与を払い続けても、現実に仕事を与えなくては失業と同じ不安を与える。必要なのは収入の保証だけではない。積極的かつ体系的に仕事を与える仕組み、すなわち、働く者を社会の生産的な一員にする仕組みである。

【2】人は最大の資産である
●なぜ成功例に学ばないのか
マネジメントは必ず成果をあげ、組織の体質を強化し、繁栄をもたらしてきた。マネジメントも強化されてきた。しかるに、ツァイスやIBMから学ばないのはなぜか。なぜ学びたがらないのか。

●誤解と恐れ
働く者に主体的に成果をあげさせるという課題を直視しない第一の、そして主たる原因は、権限と権力の混同である。労働者からの責任を持ちたいという要求に対して、「権限の放棄を要求するもの」と誤解して抵抗する。自らの権限を危うくすると誤解する。権限と権力とは異なる。マネジメントはもともと権力をもたない。責任をもつだけである。責任を果たすために権限を必要とするだけである。トップマネジメントの権限分権化によって増大する。マネジメントの権限を強化することができる。マネジメントは、部下に成果をあげさせることによって、自らの仕事に専念できる。

かつて、トップマネジメントが分権化に抵抗した理由は、もう一つあった。分権化が課すことになる高度の要求を恐れたのでる。責任を与えられた者は高度の要求をする。自らの仕事に責任を持つ者は、マネジメントが報酬にふさわしい仕事をすることを要求する。

人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人が雇われるのは、強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強み生産に結びつけ、人の弱み中和することにある。

●人こそ最大の資産
人こそ最大の資産である。マネジメントのほとんどが、あらゆる資源のうち人がもっとも活用されず、その潜在能力も開発されていないことを知っている。だが、現実には、人のマネジメントに関する従来のアプローチのほとんどが、人を資源としてではなく、問題、雑事、費用として扱っている。

●実行
必要なことは、実際に行うことである。
①仕事と職場に対して、成果と責任を組み込むことである。
②さらに、共に働く人たちを生かすべきものとして捉えることである。
強み成果に結びつくよう人を配置することである。

人を生かすべきものとして扱い、その適材適所を図ることはできる。それは、組織を業績に向かわせる。退屈な仕事や人を面白く楽しいものにはしないが、楽しいはずの仕事や人を退屈なものにするのを防ぐうえで大きな働きをする信頼成果をもたらす。マネジメントとマネージャーを人事管理から真のリーダーシップへと進ませる。

 

要点整理


◆責任と保証
責任の焦点は仕事であり、仕事に責任を持たせなければならない。働きがいを持たせるには責任を持たせなければならない。そのための三つの条件がある。

①仕事を生産的なものとするための分析、総合、管理、道具・情報の設計
②自己管理を可能とするための成果のフィードバック
継続学習

以上の三つに責任を持たせなければならない。①についても、最初から参画させることが必要である。職務設計についても、責任をもたせ、知識と経験が生かされるようにするから成果が上がるのである。

職場コミュニティの問題は業務の一環としてマネジメントするのではなく、職場コミュニティの自治で行うべきである。マネジメントを学ぶ機会である。

誰もが自らをマネジメントの一員と見なす組織をつくることが目標である。

仕事と収入の保証も大事だが、働くものを社会の生産的な一員とする仕組みが大切である。

◆人は最大の資産である
マネジメントの成功例に学ぶべきである。責任を果たすために権限移譲が必要なのであり、権限移譲することは権力を放棄せよということではなく恐れるべきではない。責任を要求すれば、マネジメントにも責任の要求がかえってくる。しかしながら、トップマネジメントの権限は分権化によって増大する。分権化によりマネジメントの権限強化される。マネジメントは部下への責任と権限委譲を行うことで、本来のマネジメント業務専念することができる。

人のマネジメントとは人の強みを発揮させることである。組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。

人こそ最大の資産である。マネジメントは資源として人の潜在能力を開発し、活用すべきである。

成果と責任を仕事に組み込み、人の強みを生かし適材適所の人事を行うことで、業績、信頼、マネジメント及びマネジメントスタッフの成長という産物を生みだす。

 

所 見


◆責任と保証
仕事の分解と設計、フィードバック、継続学習などの環境づくりに基づく責任及び責任に基づく権限を与える。仕事として成果をあげるためにも、責任を与えることが必要でやりがいに通じるというが、人間の内面においてどのようなことが起きるのか。それは、自尊心の充足であり、幸福感の醸成が心の中で生じるからだと思う。なぜ、それらが生起するのかといえば、上記の機会、プロセスに一人の人間としての尊重があり、自己の振り返りによる自己認識の深化があり、自らの強みの混入あり、自分ごとになる機会、社会的存在としての自己の役割があり、何よりも自己成長があるからだ。それはマネジメントの一員であるという自覚も促す。単なる責任の押しつけではなかなかそうはならない。そうなるような『仕掛け』が必要である。ドラッガーが述べているように、三つの条件などを意識してやっていくことは大切だと思う。

◆人は最大の資産である
責任、権限の委譲は、本人、組織、そして権限を委譲した自己の成長のためであり、自己がマネジメントに集中し、成果をあげるためでもある。責任を任せれば、当然、任せた本人にも責任は求められる。責任感の強い現場のマネジメントスタッフであればこそ、より責任の伴うマネジメントが要求されるトップマネジメントにも責任を求めるのは至極当然である。また、それによって、マネジメントも鍛えられるし、組織そのものが鍛えられるのだと思う。未だに、責任、権限移譲に躊躇するトップマネジメントもいると思うが、結果は歴然としている。長い目でみれば、成果もあがらず、人も育たず、自分自身も成長できない。停滞、衰退を招く状況を自らとつくっているともいえる。

「人は財産であり、人の強みを活かすことが必要だ」ということを知っているトップマネジャーはいるが、実際のところはそのようなマネジメントがされていないことがほとんどだろうと思う。理由としては、①(現在何とかなっているし、)そもそもなぜ必要なのかということが理解できていないこと②本人もマネジメントする側も強みがわからない、③どのようにして強みを引き出し、仕事に適合させていくかがわからない、というものだと思う。それら全てに対する回答をたった一言で導き出す抽象的概念がある。それは、「幸福とは何かを追求すること」である。根本的にはメソッドや方法論ではないと思っている。それを求める深さの次元によって、答えの次元も深化(進化)してくると思う。全ての人間は幸せになることを願っている。もちろん、幸せの価値もさまざまである。しかしながら、一元的な方法論としてのマネジメントはないが、基本と原則があるように、幸福についても、そこに至る一元的な方法論はないが、基本的な要素、状態はあると思っている。一応、それぞれに対する見解も述べることにしたい。①は、人間が自尊感情を覚えることに存在価値を見出す以上、仕事のみならず労働の要件を満たす必要がある以上、必要だということである。逆に責任、権限も与えず、生産性も考えず、ただ、仕事に人間をあてはめていくというやり方は、長期的視野にたつと、あらゆる点で成長を乏しくする。それは、顧客の評価にも跳ね返ってくる。②、③は、本人とマネジメントする側の話になる。まず、本人ができることとしては、過去を振り返り、内観しながら人生の履歴書、すなわち、成育歴を年表で詳しく書き成功体験や失敗体験、感情の起伏などに注力しながら書き、そこから強み、個性、得意なことを抽出することである。できれば、作成した上で対話する相手がいた方が良い。やりたいことと得意なこと、強みは違うことが多いので、その点にも留意しないといけない。マネジメントする側においては、採用時面接でのヒアリングはさておき、一定の期間が経ってから、ワークショップの機会を設け、各個人のプロファイル、すなわち、強み、得意なことのファイルをつくることである。具体的には、本人が思う強み、得意なこと、周りの職員が本人に思う強み、得意なことをお互い発表する。そして、一人ひとりまとめていく。その上で、マネジメントが仕事とのマッチングを検討することである。もちろん、他の方法もあると思うが、実際に実践してきたこととして有効だったと思う。

ドラッガーが繰り返し言っている。人の強みを活かすマネジメントが必要だと。私自身も失敗や挫折も重ねながら、長年マネジメントを実践していく中で全く同じことを思い、この間、実践してきた。国家的マネジメントとしては、北欧が成果を出している。人間らしさと組織的成長、成果は結びつかないと考える人もいるが、むしろ、逆である。

一人ひとりの潜在能力を開発し、人の強みを活かし、適材適所にあてはめていくこと。それは、成果はもちろんのこと、人の成長自尊心の充足幸福感の醸成を生みだす。そして、マネジメントによる醍醐味、真実の瞬間(顧客の感動)を生みだす。人間は自分を知り、自分の個性、強みが発揮できるほど、自尊心が満たされ、幸福感を得る。それが、人も組織も成長ささせるのだと思う。

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