心の本業の探求
~自分らしい生き方を求めて~

『組織マネジメントの研究Vol.12』【マネジャー③】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

11.マネジャー③

【1】自己管理による目標管理
●四つの阻害要因
組織には、人をまちがった方向へ持っていく要因が四つある。
①技能の分化
三人の石切り工の話がある。何をしているかを聞かれて、それぞれが「暮らしを立てている。」「最高の石切りの仕事をしている」「教会を建てている」と答えた。第三の男こそマネジャーである。第一の男は、一日の報酬に対して一日の仕事をする。だが、マネジャーではない。将来もマネジャーにはなれない。第二の男は、技能自体が目的となってしまう危険がある。技能の重要性は、強調しなければならないが、それは組織全体のニーズとの関連においてでなければならない。

②組織の階級化
本来の仕事とは全く異なる上司の誤った直接的、間接的要求。上司の言動、些細な言葉じり、癖や習慣までもが、計算された意味あるものと受け取られる。この問題を解決するには、全員の目を仕事が要求するものに向けさせる組織構造が必要である。

③階層の分離
階層ごとにものの見方があって当然である。さもなければ仕事は行われない。しかしながら、階層ごとにものの見方があまりにも違うため、同じことを話していても気づかないことや、逆に反対のことを話していながら同じことを話していると錯覚することがあまりに多い。よき意図や態度では解決できない。これもまた組織の構造に根ざしている。コミュニケーションが成立するには、共通言語共通の理解が前提となる。

④報酬の意味付け
それは組織社会における位置づけを表す。成果に対する評価のみならず、人間に対する評価を表す。正義、公正、公平の観念とも情緒的に結びつく。報酬について公式を求めても無駄である。最高のシステムであっても、一方において組織を強化し、他方において弱体化する。報酬は、金銭的な意味合いがあるだけでなく、トップマネジメントの価値観を教える。自分にいかなる価値があるかを教える。いかなる位置づけにあるか、いかに認められているかを教える。できることといえば、まちがった行動を褒めたり、まちがった成果を強調したり、共通の利益に反するまちがった方向へ導くことのないよう監視することぐらいである。

●目標管理
マネジャーたるものは、明確な目標を必要とする。目標がなければ混乱する。目標は自らの率いる部門があげるべき成果、他部門の目標達成の助けとなるべき貢献、他部門に期待できる貢献を明らかにしなければならない。目標には、はじめからチームとしての成果を組み込んでおかなければならない。それらの目標は、常に組織全体の目標から引き出したものでなければならない。

それらの目標は、短期的視点とともに長期的視点から規定しなければならない。有形の経済的な目標のみならず、無形の目標、すなわち、マネジャーの組織化と育成部下の仕事ぶりと態度社会に対する責任についての目標を含まなければならない。

適切なマネジメントを行うには、特にトップマネジメントが目標間のバランスを図らなければならない。

目標は組織への貢献によって規定されなければならない。それらの目標を規定することは、一人ひとりの責任である。自らの属する組織の目標の設定に参画することも、一人ひとりの責任である。

●自己管理
目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようにすることにある自己管理強い動機づけをもたらす。最善を尽くす願望を起こさせる。目標管理は、自己管理を可能とする上で必要とされる。

自らの仕事ぶりを管理するには、目標に照らして、自らの仕事ぶり成果評価できなければならない。そのための情報を手にすることが不可欠である。情報自己管理のための道具であって、上司が部下を管理するための道具ではない。

自己管理による目標管理は、人間というものが、責任、貢献、成果を欲する存在であると前提する。しかし、われわれは、人間というものがほぼ期待どおりに行動することを知っている。

目標管理を採用している組織は多い。しかし、真の自己管理を伴う目標管理を実現しているところは少ない。自己管理による目標管理は、スローガン、手法、方針に終わってはならない。原則としなければならない。

自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである。


【2】ミドルマネジメント
●人員過剰の問題
ミドルマネジメント(中間管理職)が過剰となることほど害の大きものはない。成果と意欲に害を与える。ミドル・ブームとそれに伴う過剰人員は、特に大組織の士気と動機づけに悪影響を与えた。何よりもまず、ミドルマネジメントから脂肪分を除去しなければならない。「本当にしなければならないことは何か」を検討し、「必要ないこと、削減したり廃止すべきことは何か」を考えなければならない。

給与はよく。待遇も良い。だが、仕事、挑戦、機会がなかった。仕事ではなく、互いに作用し合うことに忙しかった。今日では、高学歴の有能な青年、ビジネススクールを優秀な成績で卒業した若者たちは、就職先として中小企業や中都市の市役所を選ぶ者が増えている。彼らは「仕事があるから」と答えている。

●新種のミドルマネジメント
伝統的なミドルは命令する人だった。これに対して、新種のミドルマネジメントは、専門家である。知識を供給する人である。上や横に向かって、すなわち、自分が命令できない人間に対して「責任」を持つ。

知識専門家、新種のミドルマネジメントは、「われわれの事業は何か、何であるべきか」「目標は何か。優先度の高いものは何か、何であるべきか」「資金や人材などの基本的な資源をいかに配分するか」などの意思決定を行うことはできない。しかし、彼らは、これらの意思決定に対して、それを行うために必要な知識を供給することによって貢献する。

知識専門家とは、知識を仕事に適用し、かつ知識を基礎として、組織全体の能力、成果、方向に影響を与える意思決定を行う者である。

これら新種のミドルの知識専門家を効果的な存在とし、成果をあげさせることが、われわれにとっての新しい課題である。それは今日、マネジメントの中心課題である。

 

要点整理

◆自己管理による目標管理
●組織には、人をまちがった方向へ持っていく要因が四つある。
①技能の分化(目的意識の不統一
②組織の階級化(上司が要求するものと仕事が要求するものとが異なっていること)
③階層の分離(階層ごとにものの見方が異なり共通言語と共通の理解がないため、コミュニケーションが成立しない
④報酬の意味付け(報酬が成果だけでなく人間に対する評価、トップマネジメントの価値観を教えることであることが意識されていないこと。報酬の公式やシステムが万能だと思うこと。


●目標管理
目標は、常に組織全体の目標から引き出したものでなければならない。それらの目標は、短期的、長期的視点から規定しなければならない。有形の経済的な目標のみならず、無形の目標、すなわち、マネジャーの組織化と育成、部下の仕事ぶりと態度、社会に対する責任についての目標を含まなければならない。特にトップマネジメントが目標間のバランスを図らなければならない。目標は組織への貢献によって規定されなければならない。それらの目標を規定すること、設定すること、参画することは、一人ひとりの責任である。

●自己管理
目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようにすることにある。自らの仕事ぶりを管理するには、目標に照らして、自らの仕事ぶりと成果を評価できなければならない。自己管理による目標管理こそ、マネジメントの哲学たるべきものである。

 

◆ミドルマネジメント
●人員過剰の問題
ミドルマネジメント(中間管理職)が過剰となることほど害の大きものはない。成果と意欲に害を与える。「本当にしなければならないことは何か」を検討し、「必要ないこと、削減したり廃止すべきことは何か」を考えなければならない。仕事、挑戦、機会が無くなる。仕事ではなく、互いに作用し合うことに忙しくなる。

●新種のミドルマネジメント
新種のミドルマネジメントは、専門家である。知識を供給する人である。上や横に向かって、すなわち、自分が命令できない人間に対して「責任」を持つ。組織的意思決定に対して、それを行うために必要な知識を供給することによって貢献する。

 

所 見

◆自己管理による目標管理
①組織の価値観、仕事の目的が組織に及ぼす影響
基本・原則となる組織としての価値観仕事の目的を明確にしておくことは、とても重要だと思う。それは、トップマネジメントはもちろんのこと、一人ひとりが理解し、全体として共有化しておくことが重要だ。組織を間違った方向に向かわせる四つの要因(技能の分化、組織の階級化、階層の分離、報酬の意味付け)の問題の本質はその基本・原則がないか、理解されていないか、無視されいることからくると思う。この基本・原則は、自己管理による目標管理の前提条件となる重要な部分だ。組織としての価値観、仕事の目的が明確になっていれば、どこかでズレが生じたとしても、そこに戻ることができる。基本であり原則となる部分だ。

②自己マネジメント
組織全体の目的、目標が明確であることの次のステージとして重要になるのは、自己管理である。自己管理とは、組織全体の目標から自己の目標を見出し、自らをマネジメントしていく作業だ。このことは、組織全体の成果につもつながるが、一人ひとりが成長する機会にもなる。一部の人間による力ではなく、全体として成果があがっている組織は、自己マネジメントができる人材が揃っているともいえる。「自己管理による目標管理こそマネジメント哲学たるべきもの」とドラッガーが言っている通り、ここがとなる。その組織にどれだけマネジメントの一員として、自己マネジメントできる人材が育っているかが問われる部分になると思う。

 

◆ミドルマネジメント(中間管理職)
①本人にとってのミドルマネジメント過剰の問題
ミドルマネジメントがやたらといる組織は本当にある。当の本人も仕事、挑戦、機会が減るので、やりがいが無くなる。私も経験があるが、全く面白くない。しかも、互いに作用しあうこと、はっきり言えば、どうでもいいようなこと、生産的でないことに時間が割かれる。給与がある程度あっても、自分の存在価値を感じられなくなるので、そこにいたいという気は失せてしまう。居続けるには、「自分は何の存在価値があるのか」という自問自答のストレスと戦い続けなければならない。

②周囲、組織にとってのミドルマネジメント過剰の問題
また、ミドルマネジメントの周りのスタッフ、職員も大変である。何人もミドルマネジメントがいたら、報告、連絡、相談を速やかにしたくても、その都度誰に言ったら良いのかと迷うことになる。また、ミドルマネジメントに対してどうでも良いような忖度も生まれるかもしれない。ミドルマネジメントは、当人のためにも、顧客や末端ユーザーのためにも、組織構造の循環を良くするためにも、必要最小限にとどめるべきである。昇格や昇給の手段とすべきではない。これは持論だが、ミドルマネジメントとしては適任ではないがキャリアや知識が豊富な者について昇格や昇給をしたいのであれば、別途、マイスターの称号を設けるのも一つの案だと思う。周りのスタッフ、職員のお手本にもなり、強みを生産的なものにしていくことにつながる。

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