人間味あふれる人材開発

『組織マネジメントの研究Vol.13』【マネジャー④/マネジメントの技能①】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

11.マネジャー④

【1】組織の精神
●天才をあてにするな
組織の目的は、凡人をして非凡なことを行わせることにある。凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。組織の役目は人の弱みを無意味にすることである。要するに、組織の良否は、そこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。
①組織の焦点は、成果に合わせなければならない。
②組織の焦点は、問題ではなく機会に合わせなければならない。
③配置、昇給、昇進、階級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行わなければならない。これらの決定こそ真の管理手段となる。
④これらの人事に関わる決定は、真摯さこそ唯一絶対の条件であり、すでに身につけていなければならない資質であることを明らかにするものでなければならない。

●成果を中心に考える
あらゆる組織が、事なかれ主義(平穏無事でいざこざが起きなえれば良いとする消極主義)の誘惑にさらされる。だが、組織の健全さとは、高度の基準の要求である。目標管理が必要とされるのも、高度の基準が必要だからである。成果とは長期のものである。すなわち、まちがいや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、下らないことにしか手をつけない者である。成果とは打率である弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は、優れているほど多くのまちがいをおかす優れているほど新しいことを試みる

組織においてもっとも重要かつもっとも困難な問題は、長年真摯に働いてきたがもはや貢献できなくなった者の処遇である。そのような真摯さに対しては、真摯さをもって報いなければならない。だからといって、その者を担当役員にしておくべきではない。彼の無能は組織を危うくするだけではない。士気を低下させ、マネジメントへの不信を生む。マネジメントの真摯さを疑わせる。

●機会に集中する
組織というものは、問題ではなく機会に目を向けることによって、その精神を高く維持することができる。組織は機会にエネルギーを集中するとき、興奮、挑戦、満足感に満ちる。問題は無視できない。だが、問題中心の組織は守りの組織である。それは、悪くさえならなければ成果をあげていると考える組織である

●人事に関わる意思決定
成果中心の精神を高く維持するには、配置、昇給、昇進、降級、解雇など人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、人間行動に対して数字や報告よりもはるかに影響を与える。組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる

●真摯さなくして組織なし
真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それは人事に関わる決定において象徴的に表れる。真摯さは、すでに身に着けていなければならない。特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。

真摯さの定義は難しいが、マネジャーとして失格とすべき真摯さの欠如を定義することは難しくない。
①強みよりも弱みに目を向ける者をマネジャーに任命してはならない。やがて組織の精神を低下させる
何が正しいかよりも、誰が正しいかに関心を持つ者をマネジャーに任命してはならない。仕事よりも人を重視することは、一種の堕落であり、やがては組織全体を堕落させる
③真摯さよりも、頭の良さを重視する者をマネジャーに任命してはならない。そのような者は人として未熟であって、しかもその未熟さは通常なおらない
部下に脅威を感じる者を昇進させてはならない。そのような者は人間として弱い
自らの仕事に高い基準を設定しない者もマネジャーに任命してはならない。そのような者をマネジャーにすることは、やがてマネジメントと仕事に対するあなどりを生む。知識もさしてなく、仕事ぶりもお粗末であって判断力や行動力が欠如していても、マネジャーとして無害なことがある。しかし、いかに知識があり、聡明であって上手に仕事をこなしても、真摯さに欠けていては組織を破壊する組織にとってもっとも重要な資源である人間を破壊する。組織の精神を損ない、業績を低下させる。

12.マネジメントの技能①

【1】意思決定
●意思決定の力点をどこに置くか
効果的な意思決定の基本は、日本流の意思決定である。欧米で意思決定の力点は問題に対する答えに置く。答えに対するアプローチに重点を置く。問題への答えは、問題の明確化に続いて出てくるべきものとする。ところが、日本では、合意(コンセンサス)によって意思決定を行う。日本では意思決定で重要なことは問題を明らかにすることである。この段階にこそ、意思決定の核心があるとする。

われわれが決定と呼ぶ段階に達したとき、日本では行動の段階に達したという。日本では、この段階で意思決定の責任を「しかるべき人間」に任せてしまう。誰がこのしかるべき人間えあるかを決めるのはトップマネジメントである。そして、誰に任せるかによって問題に対する答えも決まってくる。コンセンサス形成のプロセスで、誰がどのような答えを持っているかが明らかになっているからである。

日本流意思決定のエッセンスは五つある。

①答えではなく問題を明らかにすることに重点を置く。
反対意見を出やすくする。コンセンサスを得るまでの間、答えについての議論は行わない。
③当然の解決策よりも複数の解決策を問題にする。
いかなる地位の誰が決定すべきかを問題にする。
⑤意思決定プロセスの中に実施の方策を組み込む。

日本流の意思決定は独特のものであるが、その基本は、日本以外でも十分通用する。

●問題を明確にする
何についての意思決定かを明らかにするには、問題に対する見解からスタートしなければならない。問題の認識の違いが答えの違いをもたらす。

●意見の対立を促す
マネジメントの行う意思決定は、全会一致によってなされるようなものではない。対立する見解が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めて行うことができる。したがって、意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである。

意見の対立を促すのには理由がある。
①意見の対立を促すことによって、不完全であったり、まちがったりしている意見によってだまされることを防げる。
②代案を手にできる。行った意思決定が実行の段階でまちがっていたり、不完全であることが明らかになったとき、途方に暮れなくともすむ。
③自分自身や他の人の想像力を引き出せる。

●意見の相違を重視する
明らかにまちがった結論に達している者がいても、それは、何か自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなければならない。

●行動すべきか否か
常に「意思決定は必要か」を検討しなければならない。何もしないことを決定するのも、一つの決定である。迅速に行動しないと大切な機会を失うのであれば、行動しなければならない。そうしてはじめて変革も可能となる。

具体的な問題において、行動すべきか否かを決めるのが本当に難しいことはまれである。
その指針とは、次の二つである。
①行動によって得られるものが、コストやリスクよりも大きいときには行動する
行動するか、しないかいずれかにする。二股をかけたり妥協したりしてはならない

●意思決定の実行
効果的な意思決定とは、行動と成果に対するコミットである。意思決定の実行を効果的なものにするには、決定を実行するうえでなんらかの行動を起こすべき者、逆に言えば決定の実行を妨げることのできる者全員を、決定前の議論の中に責任を持たせて参画させておかなければならない。意思決定の中に実行の手順や責任を組み込んでおくことも必要である。具体的な実行の手順が仕事として割り当てられ、責任として割り当てられないことには、決定はないに等しい。

決定の実行するためには、次の問いに応えなければならない。「この決定を知らなければならないのは誰か」「とるべき行動は何か」「それはなぜか」「行動をとるべき者が行動できるためには、その行動はいかなるものでなければならないか」

●フィードバックの仕組み
実行の成果からのフィードバックがないかぎり、期待しうる成果を手に入れ続けることはできない。

したがって、
第一に、意思決定の前提となった予測書面をもって明らかにしておかなければならない。
第二に、決定の結果について体系的にフィードバックしなければならない。
第三に、このフィードバックの仕組みを、決定を実行する前につくりあげておかなければならない。

意思決定とは、効果的な行動をもたらすために、ビジョン、エネルギー、資源を総動員することである。

 

要点整理

◆組織の精神
●天才をあてにするな
凡人から強みを引き出し、他の者の助けとすることができるか否かが、組織の良否を決定する。組織の良否は、そこに成果中心の精神があるか否かによって決まる。

●成果を中心に考える
組織の健全さとは、高度の基準の要求である。成果とは長期のものである。まちがいや失敗をしない者を信用してはならない人は、優れているほど多くのまちがいをおかす優れているほど新しいことを試みる

●機会に集中する
組織というものは、問題ではなく機会に目を向けることによって、その精神を高く維持することができる。問題中心の組織は守りの組織である

●人事に関わる意思決定
成果中心の精神を高く維持するには、人事に関わる意思決定こそ、最大の管理手段であることを認識する必要がある。それらの決定は、組織の中の人間に対して、マネジメントが本当に欲し、重視し、報いようとしているものが何であるかを知らせる

●真摯さなくして組織なし
真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。真摯さの欠如は許さない。決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない。

◆意思決定
●意思決定の力点をどこに置くか
日本では意思決定で重要なことは問題を明らかにすることである。この段階にこそ、意思決定の核心があるとする。日本流の意思決定は独特のものであるが、その基本は、日本以外でも十分通用する。

●問題を明確にする
何についての意思決定かを明らかにするには、問題に対する見解からスタートしなければならない。問題の認識の違い答えの違いをもたらす。

●意見の対立を促す
意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである。

●意見の相違を重視する
明らかにまちがった結論に達している者がいても、それは、何か自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなければならない。

●行動すべきか否か
常に「意思決定は必要か」を検討しなければならない。何もしないことを決定するのも、一つの決定である。迅速に行動しないと大切な機会を失うのであれば、行動しなければならない。そうしてはじめて変革も可能となる。

●意思決定の実行
意思決定の中に実行の手順や責任を組み込んでおくことも必要である。具体的な実行の手順が仕事として割り当てられ、責任として割り当てられないことには、決定はないに等しい。

●フィードバックの仕組み
実行の成果からのフィードバックがないかぎり、期待しうる成果を手に入れ続けることはできない。

意思決定とは、効果的な行動をもたらすために、ビジョン、エネルギー、資源を総動員することである。

 

所 見

◆組織の精神
(1)凡人などいない
天才を中心に組み立てるのではなく、凡人から非凡なもの、すなわち、強みを引き出して成果をあげていくことが組織の目的だとドラッガーは述べている。主旨そのものに異論はないが、私は、全ての人間が非凡だと思っている。

凡人にしているのは、本人の自己理解の弱さもあるかもしれない。しかしながら、マネジメントの論点でいうと、凡人にしているのは、組織であり、マネジメントがないことの証明だと思う。非凡なのに凡人のような状態でいるのは以下のようなことがあるからだと思う。一つは本人が強みを理解していないこと。そして、二つ目は組織が強みを理解していないこと。そして、三つ目は、そもそも組織にマネジメントという基礎資源がないこと。すなわち、成果をあげるために強みを引き出すことに価値をおいていないということだ。

(2)成果をあげるために重要な人事と組織の価値観
成果をあげるために、強みを引き出し適材適所人事を割りあてる必要がある。もちろん、
一人ひとりの人財をの強みを把握しておくことが重要である。しかしながら、一番大切なのは、組織としての価値観である。それに基づいて、行われなければ、正しいベクトルによらないため成果はあがらない。組織が根本的に大切にしている考え方、成果指標としているもの、善しとするものである。それがない。その都度ブレる。もしくは絵に描いた餅で機能していないのであれば、それは組織に対する不信感につながる。

(3)高い目標の設定の有無による人間の精神、組織への影響
●高い目標を嫌がる組織、人々の心理

「健全な組織は、高度の基準設定をする」とドラッガーは述べている。しかしながら、高い目標、高度な基準の設定をしたがらない組織が多いのが現実ではないか。もっと言えば、それらの目標、設定を求めない人々の方が多いのではないか。なぜならば、人間は、コンフォートゾーン、すなわち、自分の守備範囲、ぬくぬくとした快適な世界、理解できている世界、従来通りの世界に安住したがるからだ。保守的な生き物だからだ。高い目標、高度な基準設定をするといことは、新しい機会への挑戦を意味する。新しいことは不安だし、面倒だから嫌がるのだ。

●高い目標が幸福感情を生むお産婆さん
なぜ、それらの目標、基準設定が必要だといえるのか。組織ではなく、人間の本質に焦点をあててみる。どうしたら人間としての自分自身が光り輝くことができるのか考えてみる。人生においてトライアンドエラーを繰り返し、人間の精神というものをつぶさに観察、洞察すれば、挑戦を自らに課すこと、新しい機会にチャレンジすることが結果として深い幸福感情へと誘うのがわかると思う。それは人間の心が進化(深化)するからに他ならない。そこまで自己理解できていない人々が多いのかもしれない。イノベーションについても全く同じことがいえる。

●現状維持がもたらすもの
高い目標を定めない、高い基準設定をしないということは、現状維持ということになる。現状維持は、堕落を招き、活力を失い、最終的には、成果もあがらなくなる。高い目標、高い基準設定の中で成長したい優秀な人材もいなくなる。

●優秀な人材は挑戦するから失敗する
高い目標、高度な基準設定をするということは、チャレンジを生む。挑戦を生む。機会を焦点にせざるを得なくなる。そして、優秀な人材ほど、挑戦するので、失敗する可能性が高まる。保守的な人材ほど、何もしないので、失敗も少ない。そういう理屈になると思う。

●心の成長を奪う現状維持
高い目標、高度な基準を設定しないということは、挑戦しない、チャレンジしないということだ。それは、感動の機会を失うことを意味する。心の成長と魂を磨く機会を失うことを意味する。人間としての活力を失うことを意味する。
もっと言えばその先にあるより本質的な幸せを実感するチャンス、機会を放棄することを意味する。

●負の連鎖のメカニズム
現状維持の結果、組織の成長が阻害される。全体としての幸福感も下がる。そして、内部の問題ばかりに目を向けるようになる。全体としての士気が下がる。みんな幸せになりたいというのに、このメカニズムを理解できていない人達が本当に多いような気がする。

◆意思決定
ドラッガーは日本の意思決定プロセスを称賛しているようだ。欧米のように、問題の答えを導くことそのものよりも、全体での合意形成に至るプロセスを大切にする。私もマネジメントする立場であった時は基本的にそのようになってきたと思う。日本人はできるかぎりみんなで納得して進めたいという意識が強いのだと思う。もちろん、全ての組織ができているとは思わないが、マネジメントという基本資源がある組織は、行われていると思う。日本の方がいろんな要素が意思決定プロセス、l合意形成プロセスの中に包含されているため、膨大に時間がかかっているように見えるかもしれないが、その後の流れも含めて議論するところもあるので見方によっては合理的とも言える。日本の会議は長いと思われがちだが、長所もあるのだと思う。

もちろん、決定したことを行動に移すと共に、フィードバックも大事だ。結果を検証して、その差異を確認し、改善していくことは当然のことながら必要だからだ。

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