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『組織マネジメントの研究Vol.15』【マネジメントの技能③、マネジメントの組織①】

テーマ毎のまとめ(マネジメント『基本と原則』/P.F.ドラッガー)

12.マネジメントの技能③

【1】経営科学(マネジメント・サイエンス)
●経営科学への期待
経営科学は大きな貢献を果たしうる道具である。しかし、マネジャーは、自ら経営科学者である必要はない。だが、経営科学に何を期待でき、いかにそれを使いこなすかは知らなければならない。今日経営科学を使いこなしているマネジャーがほとんどいない。

今日のところ、経営科学という新しい職業が確立した。しかし期待を裏切っている。マネジメントの実践に革新をもたらしていない。経営科学という潜在力を持つ道具をまちがって使い、あるいは使いこなせないでいる原因は何か。

●経営科学誕生の経緯
経営科学は、他の学問が開発したコンセプトと方法論を借用することからスタートした。その結果、経営科学の仕事のほどんどが、企業とは何か、マネジメントとは何か、企業とそのマネジメントに必要なものは何かに関心を払わずに進められた。関心はもっぱら、この見事な手法を適用できるのはどこかだった。

経営科学は、自らの対象とする領域を定義することをいまだなおざりにしている。経営科学は、真の貢献を果たすつもりであるならば、まず初めに、その対象を定義しなければならない。その定義には、企業とは、人から成るシステムであるとの理解が含まれる。現実のマネジメントの前提、目的、考え、あるはまちがえまで基本的事実とならなければならない。基本的事実の研究と分析こそが、経営科学が意義ある成果をあげるために、まず取り組むべきことである。

●経営科学が公準とすべきもの
①企業は、社会から影響を受け、影響を与える存在である。言い換えるならば、企業とは、社会的、経済的な生態システムの一員である。
②企業は、人が価値あると認めるものを生み出す存在、顧客の役に立つものを生み出す存在でなければらないあい。
③企業は測定の尺度として金を使う。
④経済的な活動とは、現在の資源を不確かな未来に投入することである。期待に投入することである。企業にとって、リスクは本源的なものであり、リスクを冒すことこそ基本的な機能である。
⑤企業は新しい状況に適合する進化の能力を持つと同時に、周囲の状況に変化をもたらす革新の能力を持つ。

経営科学はこれらの公準をもって自らの基盤としなければならない。経営科学にとってもっとも必要なことは、独立した真の学問としての自覚を持つことである。

●科学としての姿勢
経営科学にもっとも求められていることは、その対象をまじめにとりあげる姿勢である。
経営科学は、最終目標としてリスクをなくすことや最小にすることに力を入れている。企業活動からリスクをなくそうとしても無駄である。経済的な進歩とは、リスクを負う能力の増大であると定義できる最大のリスクは、硬直化のリスクを冒すことである。リスクの最小化という言葉は、企業を技能に従属させようとするものだ。経済活動を、責任を伴う自由裁量の世界としてではなく、物理的に確定した世界と見なしている。これは最悪である。経営科学がその対象を軽んじていることを意味している。

経営科学の主たる目的は、正しい種類のリスクを冒せるようにすることでなければならない。マネジメントのために、いかなるリスクがあり、それらのリスクを冒したとき何が起こりうるかを明らかにしなければならない。

●マネジャーの責任
マネジャーもまた、経営科学の潜在能力と現実とのギャップについて責任がある。マネジャーは、経営科学や経営科学者が必要としているものを与えることができ、しかも与えなければならなににもかかわらず、今日のところそれを与えていない。

経営科学を生産的にするためには、次の四つのことを期待し、あるいは要求しなければならない。

①仮定を検証する
②正しい問題を明らかにする
③答えではなく代替案を示す
④問題に対する公式ではなく理解に焦点を合わせる

経営科学の目的は、あくまでも診断を助けることにある。経営科学は万能薬でも処方箋でもない。それは問題に対する洞察でなければならない。

経営科学の潜在的能力を引き出すのはマネジメントである。マネジャーは経営科学とは何であり、何をなしうるかを理解しておかなければならない。

 

13.マネジメントの組織①

【1】新しいニーズ
●高まる期待
組織構造こそ、成果をあげるための前提である。しかし、今日、職能別組織や分権組織では間に合わないニーズが出ている。

●学んだこと
①組織構造はおのずから進化していくものではない。
組織のなかで自ずから進化していくものは、混乱、摩擦、間違った成果だけである。
組織構造の設計は最後に手をつけるべきである。
最初に手をつけるべきは、組織の基本単位を明らかにすることである。
③構造は戦略に従う。
組織構造は組織が目的を達成するための手段である。組織づくりの最悪のまちがいは、いわゆる理想モデルや万能モデルを生きた組織に機械的に当てはめるところから生じている。

戦略とは、「われわれの事業は何か、何になるか、何であるべきか」との問いへの答えである。組織構造を決めるのは、この戦略である。戦略が組織の基本活動を決める。

●組織構造で注意すべきこと
①組織構造や個々の職務の設計は課題中心に行われなければならない。
実際の仕事の割当は人と状況に合わせて行われなければならない。

②階層型組織と自由形組織
階層型組織は自由を与える。割当てられた職務を遂行しているかぎり、仕事を行っていることになる。それ以上の責任はない。

自由型組織は、そもそも名称がまちがえている。自由型組織とは小規模グループのことである。それはチームのメンバーに対して、厳しく自己規律を要求する。全員がチームの仕事をしなければならない。チーム全体の成果に責任を持たなければならない。

しかも、階層はあらゆる組織に必要である。最終決定を下すことのできる者がいなければならない。さもなければ、組織は単なる議論の場と化す。いかなる組織も全体の危機に見舞われる。その時明確な命令権が一人の人間に与えられていなければ組織全体が滅びる。

③唯一絶対の組織構造はない。
組織の中の人間が成果を上げ貢献できるようにする組織構造は、すべて正しい答えである。なぜなら、人のエネルギーを解き放ち、それを動員することが組織の目的であって、均整や調和が目的ではないからである。成果こそ組織の目標であり、良否の判定基準である。

 

要点整理

◆経営科学(マネジメント・サイエンス)
経営科学は役割を果たしていない。それは、他の学問が開発したコンセプトと方法論を借用することからスタートしているからだ。現実の基本的事実の研究から取り組むべきである。

リスクの最小化が役割ではなく、正しい種類のリスクを冒せるようにし、起きうることを予見することが経営科学の役割だ。

マネジャーは経営科学に対し、期待するもの、要求するものを提供し、潜在能力を引き出すべきである。

◆新しいニーズ
職能別組織や分権組織では間に合わないニーズが出ている。

組織構造の設計は最後に手をつけるべきである。組織構造は組織が目的を達成するための手段である。組織構造を決めるのは事業の目的を果たすための戦略である。組織構造は課題中心でなければならない。

階層型組織、自由型組織、どちらが良いかというのは問題ではない。自由型組織は、小グループを意味し、全員がチームの仕事をし、成果に責任をもたなければならない。自己規律が厳しく要求される。

どのような階層においても、最終決定を下す者がいなければならない。

人のエネルギーを解き放ち、それを動員することが組織の目的である。組織の中の人間が成果を上げ貢献できるようにする組織構造は、すべて正しい答えである。


所 見

◆経営科学(マネジメント・サイエンス)
(1)マネジメント・サイエンスの機関

ドラッガーは、マネジメント・サイエンスを行っている機関とは、具体的に学会、大学、ビジネススクール、専門学校、専門家集団のことを指している。そして、それらが相対として役割を果たしていないのではないかと述べている。私も同じ意見である。

(2)マネジメント・サイエンス機関の興亡の基準
私もいくつかのそれらの機関と関わったことがある。はっきり言えば、現場から学ぶことを大切にし、現場に重きを置いている機関は成長しうるが、そうではなく、マネジメントの成功の価値基準を机上の世界で学んできた基準ではかったり、単に売上や組織の大きさ、社員数等ではかろうとしている機関は衰退しているのではないかと思う。

(3)マネジメント・サイエンス機関はマネジメントができているか
ありがちなのは、マネジメント・サイエンスの類にいる機関の内部がマネジメントできていないということだ。マネジメントは机上の世界の話ではない。あらゆる組織の心臓部に関わる問題であり、学習だけでは学べない。厳しいようだが、社会人経験のない人物はもちろんのこと、マネジャーや管理職としての経験もなくマネジメント・サイエンスの機関で働くのは、かなり難しいように思う。自らの失敗も含めた実体験が必要だ。生きた体験プラス学習が必要だと思う。

 

◆新しいニーズ
(1)組織構造をつくる手順

ドラッガーは、「組織構造は最後に手をつけるべき。」と言っている。それは本当に正しいと思う。先に枠をはめたら、現状に合わなくなる。目的となる事業に基いて、戦略があり、その戦略を果たすための組織構造という流れを踏む必要があると思う。

(2)なぜ、小グループ(自由型組織)には厳しい規律が必要か
ドラッガーは小グループには、「厳しい規律が必要。」と述べている。それは、原則として、管理するものが、自分自身以外いなくなるからである。全員がマネジメントの一員であり、成果に対する責任を持つからだ。

(3)最終決定者はいかなる組織でも必要か
そして、「どのような階層でも決定を下す人間が必要だ。」とドラッガーは言っている。以外と、小グループ(自由型組織)の話としてたまにあるのは、「決定者はいらないのではないか。」という話である。フラットな組織も含め、どのような組織構造においても最終決定を下すものは必要だ。迅速な対応ができなくなったり、責任の所在がわからず右往左往しクライアントに迷惑をかけるという事態になったり、「会議は踊る。されど進まず。」ということになりかねない。

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