人間味あふれる人材開発

『自己マネジメントの研究Vol.4』《重要なことに集中せよ》

テーマ毎のまとめ(プロフェッショナルの条件/P.F.ドラッガー)

1.自らをマネジメントする

【4】もっとも重要なことに集中せよ

●時間を無駄にしているヒマはない
成果を上げるためには集中が必要)
成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも、一度に一つのことしかない。
集中が必要なのは、仕事の本質と人間の本質による。

成果をあげるためにはまとまった時間が必要)
成果をあげることに力を入れるためには、継続的な努力が必要となる。成果を得るためのまとまった時間が必要となる。真に生産的な半日、あるいは二週間を手に入れるためには、厳しい自己管理と、ノーといえるだけの不動の決意が必要である。

強みを生かすには集中が必要)
自らの強みを生かそうとすれば、その強みを重要な機会に集中する必要を認識する。
事実、それ以外に成果をあげる方法はない。二つはおろか、一つでさえ、よい仕事をすることはむずかしいという現実が、集中を要求する。人はよろず屋である。その多様な能力を一つの成果に向けるには集中するしかない。

早く仕事をするためにも一つのことに集中せよ)
同時に二つの仕事を手がけ、テンポを変えていったほうがよくできる人がいる。だが、そのような人でも、二つの仕事のいずれにおいても成果をあげるには、まとまった時間が必要である。ただし、三つの仕事を同時に抱えて卓越した成果をあげる人はほどんどいない。

集中は、あまりに多くの仕事に囲まれているからこそ必要となる。なぜなら、一度に一つのことを行うことによってのみ、早く仕事ができるからである。時間と労力と資源を集中するほど、実際にやれる仕事の数や種類は多くなる。これこそ困難な仕事をいくつも行う人たちの秘訣である。彼らは一時に一つの仕事をする。その結果、他の人たちよりも少ない時間しか必要としない。

成果のあがらない人)
・第一に、一つの仕事に必要な時間を過少評価する。
楽観する。実際に必要な時間よりも余裕を見なければならない。

・第二に、彼らは急ごうとしてさらに遅れる。
成果をあげる者は、時間と競争しない。ゆっくり進む。

・第三に、彼らは同時にいくつかのことをする。
そのため、まとまった時間をさけない。いずれか一つが問題にぶつかると、すべてがストップする。

成果をあげる人)
成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを、一つのことに集中する。もっとも重要なことを最初に行うべく、集中する。

●古くなったものを整理する
集中するための第一の原則は、もはや生産的でなくなった過去のものを捨てることである。昨日の成功は、非生産的となったあとも生き続ける。過去からの継承たる活動や仕事のうち、成果を期待しえなくなったものを捨てることによって、そのような過去への奉仕は減らしていくことができる。

はるかに危険なものがある。本来うまくいくべきでありながら、なぜか成果のあがらない仕事である。

自らが成果をあげることを望み、組織が成果をあげることを望む者は、常に計画、活動、仕事を点検する。「これは価値があるか」を自問する。成果をあげる者は、新しい活動を始める前に必ず古い活動を捨てる。肥満防止のためである。人からなる組織も、生物の組織と同じように、スマートかつ筋肉質であり続けなければならない。

新しいもの)
新しいものにやさしいものはない。新しいものは、必ず問題にぶつかる。新しいものを難局から救う唯一の手だてが、仕事のできる人を用意しておくことである。新しいものは、実績のあるベテランによって始められなければならない。新しい仕事というものは、どこかで誰かがすでに行っていることであっても、すべて賭けである。

古いものを廃棄して新しいもの、アイデアを実現する)
古いものの計画的な廃棄こそ、新しいものを強力に進める唯一の方法である。私の知るかぎり、アイデアが不足している組織はない。想像力が問題ではない。そうではなく、せっかくのよいアイデアを実現すべく仕事をしている組織が少ないことが問題である。

●劣後順位の決定が重要
どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要である。唯一の問題は、何がその決定をするかである。機会は、それを担当する有能な人が存在して、初めて実現できる。

取り組むべきでない仕事の決定の順守こそ重要)
実は、本当に行うべきことは優先順位の決定ではない。優先順位の決定は比較的容易である。集中できる者があまりに少ないのは、劣後順位の決定、すなわち、取り組むべきでない仕事の決定と、その決定の順守が至難だからである。

延期とはタイミングを逃すこと)
延期とは断念を意味することを、誰もが知っている。後日取り上げても、もはやタイミングは狂っている。タイミングは、あらゆるものの成功にとっても重要な要因である。

●必要なのは勇気だ
優先順位と劣後順位に関して重要なことは、分析ではなく勇気である。

優先順位の決定原則)
第一に、過去ではなく未来を選ぶことである。
第二に、問題ではなく機会(チャンス)に焦点を当てること。
第三に、横並びではなく自らの方向性(自らの独自性)をもつことである。
第四に、無難で容易なものではなく、変革をもたらすもの(新しい道をきりひらくこと)に照準を合わせることである。

大きな業績を上げる者は、機会(チャンス)を中心に研究の優先順位を決め、他の要素は、決定要因ではなく制約要因にすぎないとみる。同じように、マネジメントの世界においても、大きな成功を収める企業は、既存の製品ラインの中で新製品を出す企業ではなく、技術や事業のイノベーションを目指す企業である。問題の解決、すなわち昨日の均衡の回復などよりも、機会を成果に変えることのほうが、はるかに生産的である。

優先順位は変化する)
優先順位や劣後順位は、現実に照らして検討修正していかなければならない。優先順位の高い仕事を実現していくことによっても、優先順位は変わっていく。

☆集中とは、「まことに意味あることは何か」「もっとも重要なことは何か」という観点から、時間と仕事について、自ら意思決定する勇気のことである。この集中こそ、時間や仕事の従者となることなく、逆にそれらの主人となるための唯一の方法である。

 

要点整理

●何のために集中するか
成果をあげるために必要なのは集中すること。集中とは、一番重要なことから、一番最初に、一つに絞ってやること。そのためにまとまった時間を確保すること。

●成果をあげるために強みを一点に集中させること
成果をあげるためには、強みを生かし、重要な機会に集中すること。そうでなければ良い仕事はできない。

仕事を早く終わらせためにも一点集中すること
仕事を早く終わらせるためにも、集中が必要であり、一つに絞って処理していくことが大切。

●集中するために古いものを思い切って捨てること

●集中するためには優先順位勇気をもって決めること
優先順位勇気をもって決めることが必要。優先順位は、①未来、②チャンス、③自らの独自性、④新しい道を切り開くことを決定原則とすること。

 

所 見

●自分も成果があがらない人だった
以前は自分もドラッガーが述べている「成果のあがらない人」の典型だった。当時は力量も追いついていなかった。31歳の頃。一つの圏域全体のトップマネジメントを任されたばかりの頃の話である。一つの仕事に必要な時間を過少評価して遅れ、急ごうとして遅れ、いくつかの仕事を同時にやることで何かが止まると全体が止まる。まさに、その典型だった。そして、深夜まで作業することによってカバーしていた。しかし、深夜まで長時間仕事をすることは、仕事の質もあがらないし、体も壊す。実際に入院した。組織改革、経営改革、渉外活動、事業所の立上げ、企画書づくり、集会やフォーラム等の準備、理事会や全国、本部、ブロック、各事業所ごと(約10事業所)の会議の出席及び資料づくり。出張も多かった。目の前のことにただ追われてやっているだけだった。

●重要なことに一点集中する勇気と覚悟
上記のような凄まじい量の仕事とプレッシャーの中で失敗と挫折も重ねた。しかし、その中から学んだことがあった。それは、各々の局面において、重要な仕事を選び抜き、徹底的に集中しなければ成果は出せないこと。機会を逃したら終りだということ。そして、その見極めを間違えると重大な失態を招くことになるということだった。重要なことに集中するためには、その都度力の入れ具体を変えていくことも必要だった。例えば、報告書の作成は本当に簡潔なものにしたり。自分でなくてもできることは、他の職員にお願いしたり。今できないことははっきりできないと言ったり。多少遅れても許されるもの、怒られるだけで済むものは後回しにした。それを覚えてから成果が出始めた。重要な仕事をその時々で見極め、徹底して集中したからだった。

●重要な成果を出すために成果の劣後を考える
その間、他人は別な成果が犠牲になっているなどと勝手なことを言うが、全ての成果を同時には出すことはできない。究極的には成果においても劣後を考えてやっていくしかない。

●集中は命がけ
ドラッガーの言葉に照らして、自らの経験を振り返り見えてきたこと。自らの体験知性となっていること。それは、「今、最も意味があり、重要なことは何かを見極めること」「その仕事に時間を投下し集中することを自らの意思で決断する勇気をもつこと」。そして、「その機会にしか得られない重要な成果のための代償として、他の成果が得られなかったとしても動じない哲学と覚悟をもつこと」。成果を出すために集中することは、時には命がけだ。

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